大麻草の栽培の適正を図るために必要な規制を行い、「麻薬及び向精神薬取締法」(昭和28年法律第14号)とともに、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止することを目的とした法律。昭和23年法律第124号。旧称「大麻取締法」。2023年(令和5)に大麻取締法が改正され、大麻が「麻薬及び向精神薬取締法」の規制対象とされたことにより、本法は大麻の栽培規制のみに特化した法律となり、現在の名称に改題された。
旧大麻取締法は、第二次世界大戦後に連合国最高司令官総司令部(GHQ)の指示によって制定された法律(昭和23年法律第124号)であるが、制定当初は大麻の輸入・輸出・所持・栽培・譲受・譲渡・使用等が禁止され、違反者には3年以下の懲役などの刑罰が定められていた。その後、薬物規制に関する国内外の情勢に対応するために逐次改正を重ねてきた。
近年、若年層の大麻使用による検挙数の増加を受け、2021年から厚生労働省の検討会で、大麻の「使用罪」の創設などが検討されてきた。また、同時に大麻の医療的利用についても検討が進められた。
2023年に出された政府の大麻取締法改正案では、大麻草を原料とする医薬品の国内使用を認め、医薬品原料用の栽培も許可制で認める一方、大麻の非医療的使用を禁止するため、大麻を「麻薬及び向精神薬取締法」で規制する麻薬に位置づけるというものだった。これにより、他の規制薬物と同様に、大麻についても使用(施用)罪が適用できるようになった。これに伴い、法律の名称は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更された。
本法は、第1章「総則」、第2章「第一種大麻草採取栽培者」、第3章「第二種大麻草採取栽培者及び大麻草研究栽培者」、第4章「大麻草の種子の取扱い」、第5章「雑則」、第6章「罰則」、「附則」で構成されている。おもな内容は以下のとおりである。
(1)本法における「大麻」は、「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く)」をさす。樹脂は含まれるが、成熟した茎、種子、形状を有しない製品(たとえば、発芽不能な種子やTHC〈テトラヒドロカンナビノール〉の濃度が基準値以下の製品)は除外される。
(2)栽培免許の区分は次のように再編された。
①繊維や神事用の原材料の栽培者:都道府県知事による「第一種大麻草採取栽培者免許」
②医薬品の原料の栽培者:厚生労働大臣による「第二種大麻草採取栽培者免許」
③大麻草研究栽培者:厚生労働大臣による「大麻草研究栽培者免許」
これらの免許のない者の栽培は禁止されている。大麻草の単純栽培は1年以上10年以下の拘禁刑に処される。また営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑、もしくは情状により1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金に処される。
栽培以外の大麻の扱いは使用(施用)罪の適用対象となる「麻薬」に変更された一方で、製品などに残留するΔ(デルタ)9-THC(大麻に含まれている精神活性成分)の残留限度値が設けられ、含有量が限度値以下の製品は麻薬規制の対象外となり流通可能となった。
(3)旧法で禁止されていた大麻から製造された医薬品の使用および施用が認められている。ただし、大麻の不正な使用、施用または交付は「麻薬及び向精神薬取締法」違反となり、処罰の対象となる。
(4)国民の国外犯処罰については、2023年の改正後、大麻の栽培のみが対象となった。大麻の輸出入・譲渡・譲受・所持は「麻薬及び向精神薬取締法」の対象となっており、同法に国外犯処罰規定が存在する。