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硬骨魚綱ヒメ目ヒメ科の海水魚。駿河（するが）湾以南の太平洋岸、沖縄本島近海、東シナ海、台湾付近、オーストラリア北西岸などに分布する。体は細長く、背びれの起部付近でもっとも高い。頭の背外郭は目の上方でほとんど盛り上がらない。吻（ふん）はとがる。目は大きく、眼径は吻長よりわずかに長いか、ほとんど等しい。両眼間隔域はくぼみ、その幅は眼窩（がんか）幅のおよそ半分。上顎（じょうがく）の後端は瞳孔（どうこう）の後縁下を越える。上下両顎には数列の歯帯、鋤骨（じょこつ）（頭蓋（とうがい）床の最前端にある骨）と口蓋骨には2～3列の歯があり、舌上には微小な歯が楕円（だえん）形状に散らばる。全鰓耙（さいは）数は14～17本。鱗（うろこ）は大きく、櫛鱗（しつりん）。側線は鰓孔の上端から尾びれ基底（付け根の部分）までまっすぐに走り、側線鱗数は39～44枚。背びれは胸びれ基底の後端上方から始まる。背びれ軟条は16本で、雄では第2軟条が糸状に長く伸長し、その長さは体長の32～52％、雌では伸長しないで、体長の14～18％である。小さい脂（あぶら）びれ（背びれの後方にある1個の肉質のひれ）が臀（しり）びれの後部の上方にある。尾びれは深く二叉（にさ）する。体は桃色がかった銀白色で、腹面では銀白色。側線の上方に前後で対（つい）になったものが3個と、対でないもの1個の顕著な紫赤色の斑紋（はんもん）が並ぶ。第1対は背びれの前部、第2対は背びれの後部、および第3対は脂びれの下方にあり、最後の1個は尾柄（びへい）後端の上半部にある。背びれは雄には黄色のまだらもようがあり、後端が黒く、伸長軟条は橙（だいだい）色、雌には赤みを帯びた斑紋がある。臀びれは透明で、雄には中央に黄色帯があるが、雌にはない。尾びれは雄には上葉と下葉の中央に黄色の帯状斑があり、雌には淡赤色の斑点がある。水深120～230メートルの大陸棚縁辺（台湾では水深30メートルの沿岸）の貝殻混じりの砂底にすみ、底引網でまれにとれる。最大体長は30センチメートルに達するが、20センチメートル前後のものが多い。
従来、本種が属するヒメ属の学名にはAulopusが使われていたが、オーストラリアの魚類研究者のマーティン・ゴモンMartin F. Gomon（1945― ）らは形態とDNAの分析結果に基づいて2013年にHimeに変更した。本種は雄の背びれ第2軟条が糸状に伸長すること、雌の背びれの前端付近に顕著な暗色斑点がないこと、全鰓耙数が17本以下であることなどでヒメと区別できる。ハタタテヒメHime sp.は雄の背びれ軟条が伸長することなどで本種に似るが、ハタタテヒメは雄の背びれ第2～第4軟条が伸長し、眼窩の上縁が頭部背縁より突出することなどで本種と区別できる。しかし2025年時点ではハタタテヒメにはまだ学名が与えられていない。ハタタテヒメは奄美（あまみ）大島、沖縄本島、台湾、フィリピンなどの海域から知られている。