硬骨魚綱ヒメ目ヒメ科の海水魚。相模(さがみ)湾から奄美(あまみ)大島、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、オーストラリア北西岸などの海域に分布する。体は細長く、背びれの起部付近でもっとも高い。頭の背外郭は目の上方でわずかに突出する。吻(ふん)はとがり、眼径より長い。目は大きく、高位に位置する。両眼間隔域はやや狭く、深くくぼむ。口は大きくやや斜めに開き、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の後縁下に達する。上下両顎の歯は小さく、絨毛(じゅうもう)状の歯帯を形成する。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨、舌上に歯がある。鰓耙(さいは)は長いが、両端のものは塊状で、全鰓耙数は20~23本。鱗(うろこ)は大きい櫛鱗(しつりん)で、側線鱗数は35~37枚。小さい脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質のひれ)が臀(しり)びれの後部の上方にある。背びれ軟条は14本で、吻端から脂びれのおよそ中間から始まり、その基底長(付け根の部分の長さ)は背びれ基底の後端から脂びれの長さよりも長い。背びれ前部の軟条は後部の軟条よりも長く伸長しない。背びれを倒してもひれの後端は脂びれに達しない。腹びれの基底は背びれ起部よりもわずかに前にある。尾びれは二叉(にさ)するが、くぼみは浅い。体は赤褐色で、腹方はやや淡い。体側の中央部に4個の暗褐色の不規則形の雲状斑紋(はんもん)があり、第1斑紋は背びれの前部下方に、第2斑紋は背びれの後部下方に、第3斑紋は脂びれ下方に、そして第4斑紋は尾びれ基底にある。それらの斑紋の間に同色の小斑紋が散らばる。頭部は体より暗色で、上顎の後部、鰓膜および喉部(こうぶ)は白い。背びれと尾びれの上葉は淡色で、橙(だいだい)色の斑点が散らばる。臀びれ、腹びれおよび尾びれの下葉は橙色。最大体長は40センチメートルに達する。水深250~500メートルの貝殻混じりの砂やいくぶん粗い砂の海底にすみ、底引網、定置網などでとれる。
従来、本種はヒメ属に入れられていたが、オーストラリアの魚類研究者のマーティン・ゴモンMartin F. Gomon(1945― )らは形態とDNAの分析結果に基づいて2013年に新属のエソダマシ属Leptaulopsを創設した。本種は背びれ軟条が14本であること、側線鱗数が37枚以下であること、吻が眼径より長いことなどで日本産のヒメ属の3種(ヒメ、イトヒキヒメ、ハタタテヒメHime sp.)と区別できる。