硬骨魚綱ワニトカゲギス目ムネエソ科ムネエソ亜科に属する海水魚。東北地方の太平洋沖から南西諸島、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、九州・パラオ海嶺(かいれい)、台湾南部海域など西部太平洋の温帯・亜熱帯海域に分布する。体は著しく側扁(そくへん)し、腹部は丸く突出する。吻(ふん)はきわめて短く、眼径のおよそ2分の1。目は大きいが、望遠眼(望遠鏡のように筒状に突き出した目)ではない。瞳孔(どうこう)はいくぶん縦長。両眼間隔幅は狭く、2本の隆起した鋸歯縁(きょしえん)がある。口は大きく、ほとんど垂直に開く。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後角部に、下方に向いた強い棘(きょく)が1本ある。頭部の後縁背側部にある後側頭骨棘は3本に分かれ、最上棘はもっとも長く、瞳孔径より長い。体の腹縁に並ぶ腹部発光器は10個の鱗板(りんばん)(板状の鱗(うろこ))で支持され、その腹縁に弱い鋸歯縁がある。腹部発光器の上方にある腹部上部発光器は3個。臀(しり)びれ基底(付け根の部分)にある臀びれ発光器は12~14個。臀びれの前にある臀びれ前発光器は5個で、最前のものはほかよりやや高位にある。背びれは13軟条で、背びれの直前に小さくて透明な板(背刀(はいとう))がある。臀びれは14~15軟条で、2部に分かれない。胸びれは大きく、基底は鰓孔の下方近くにある。腹びれは小さく、最後方の腹部発光器の直後にある。体の背側面および発光器の周辺部は黒褐色で、ほかは銀白色。背びれ起部の前方から下方に伸びる細い黒褐色帯があり、先端部は体側の中軸線近くに達する。体長は最大で約7センチメートル。水深100~350メートルの大陸棚斜面や海山付近の中深層に生息する。
本種が属するホウネンエソ属魚類は、腹部発光器が10個で、腹部上部発光器が3個であることなどで、ムネエソ亜科の他属魚類と区別できる。日本からは本属に本種以外に7種が知られているが、本種は後側頭骨棘が3本に分かれること、腹部発光器の鱗板の腹縁が鋸歯状であること、背びれの前方の下方に向かう黒褐色帯が細長くて体側の中軸線近くに達することなどの特徴で他種と区別できる。