硬骨魚綱ワニトカゲギス目ムネエソ科ムネエソ亜科に属する海水魚。九州・パラオ海嶺(かいれい)、フィリピン近海に分布する。体は著しく側扁(そくへん)し、腹部は丸く突出する。吻(ふん)はきわめて短く、眼径のおよそ2分の1。目は著しく大きいが、望遠眼(望遠鏡のように筒状に突き出した目)ではなく、いくぶん縦長。両眼間隔域に2本の隆起縁がある。口は大きく、ほとんど垂直に開く。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は鋸歯(きょし)状で、後角部に下方に向いた強くて長い棘(きょく)が1本と、後方に向いた短い棘が1本ある。頭部の後縁背側部にある後側頭骨棘は大きくて角状に長く伸び、基部にも2本の短い棘がある。体の腹縁に並ぶ腹部発光器は10個の鱗板(りんばん)(板状の鱗(うろこ))で支持され、その腹縁に弱い鋸歯縁がある。腹部発光器の上方にある腹部上部発光器は3個で、後方のものほど高位にある。臀(しり)びれ基底(付け根の部分)にある臀びれ発光器は4個で、基底の後部にある。臀びれの前にある臀びれ前発光器は5個で、臀びれ上発光器を欠く。背びれは10軟条で、背びれの直前に小さい透明な板(背刀(はいとう))がある。臀びれは11軟条で、基底はきわめて短い。胸びれは大きく、基底は鰓孔の下方近くにある。腹びれは小さく、最後方の腹部発光器の直後にある。体の前背側面、頭の下部、および発光器の周辺部は黒褐色で、ほかは銀白色。背びれ起部前方に下方に伸びる幅広い黒褐色帯があり、先端は体側の中軸線を著しく越える。この帯は基部で分岐して背びれ基底に沿って伸び、背びれの中央下方にまで達する。尾柄(びへい)の上半部に黒褐色斑(はん)が散在するほか、尾びれ基底に1対(つい)の小黒褐色斑がある。体長は最大で約4センチメートル。水深100~350メートルの大陸棚斜面や海山付近の中深層に生息する。
本種が属するホウネンエソ属魚類は、腹部発光器が10個で、腹部上部発光器が3個であることなどで、ムネエソ亜科の他属魚類と区別できる。日本からは本属に本種以外に7種が知られているが、本種は臀びれ基底が短く、臀びれ発光器が4個しかないこと、前鰓蓋骨棘が2本に分かれること、後側頭骨棘が角状に長く伸びること、背びれ起部前方の下方に向かう黒褐色帯が幅広くて長く、体側の中軸線を越えることなどの特徴で他種と容易に区別できる。