社会における所得分配の不平等度を測る指標。0から1までの値をとり、分配が不平等であるほど大きな値をとる。イタリアの人口学者、社会学者、統計学者のコッラド・ジニによって考案された。
ジニ係数の求め方は以下のとおりである。世帯(または世帯員)を所得の低い順に並べて、世帯数(または人数)の累積比率を横軸に、所得額の累積比率を縦軸にとってグラフ(ローレンツ曲線)を描く。すべての世帯の所得が同一であれば、ローレンツ曲線は原点を通る傾斜45度の直線に一致する。この直線を均等分布線といい、均等分布線を斜辺とする直角三角形の面積に占める、均等分布線とローレンツ曲線で囲まれた面積の割合がジニ係数である(図)。このため、すべての世帯の所得が同一でローレンツ曲線が均等分布線に一致するとジニ係数は0となる。逆に、たった1人がすべての所得を独占しているケースでは均等分布線とローレンツ曲線で囲まれた面積は、均等分布線を斜辺とする直角三角形の面積に一致するため、ジニ係数は1となる。すなわち、ジニ係数が1に近いほど不平等度が高いことが示される。
日本では厚生労働省が3年ごとに実施している所得再分配調査のなかでジニ係数を算出・公表している。2023年(令和5)8月に公表された2021年所得再分配調査によると、税金が引かれる前の給与などの当初所得のジニ係数は0.5700と、2005年(平成17)調査の0.5263から上昇している。一方、税や社会保険料が引かれ、社会保障給付などが行われた後の再分配所得のジニ係数は、2005年調査の0.3873に対し2021年調査は0.3813と、ほぼ横ばいである。厚生労働省は「当初所得での格差の拡大傾向が、社会保障を中心とした所得再分配機能により再分配所得ではほぼ横ばいに抑えられている」と説明している。
なお、当初所得におけるジニ係数の拡大傾向の最大の原因として経済学者の間で合意されているのは、高齢者の増加である。高齢者のなかには、退職して年金収入のみの人(当初所得はゼロ)も、会社役員として多額の報酬を得ている人(当初所得が多額)も存在し、所得格差が大きいためである。こうした高齢者が人口全体に占める割合が高まってきたことが当初所得におけるジニ係数の上昇につながっていると考えられる。