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食料・農業・農村基本法

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食料・農業・農村基本法
しょくりょうのうぎょうのうそんきほんほう

食料、農業、農村の各分野にわたる政策の基本理念と基本方向を示す法律(平成11年法律第106号)。1961年(昭和36)に制定された農業基本法にかわる基本法として、1999年(平成11)7月16日に公布・施行された。その後、日本の食料、農業、農村を取り巻く情勢が大きく変化したことに対応するため、2024年(令和6)に改正され、同年6月5日に公布・施行された。

[安藤光義]2025年10月21日

制定と改正の背景

1961年に制定された農業基本法は、高度経済成長のもとで生じた農工間所得格差問題に対応することを目的としていた。1990年代に入り、ガット(GATT、関税および貿易に関する一般協定)のウルグアイ・ラウンド農業合意、WTO(世界貿易機関)体制への移行により国内農業政策と国際ルールの調和(ハーモナイゼーション)が求められた日本は、農業の有する多面的機能を掲げ、これを根拠とした政策転換を視野に食料・農業・農村基本法を制定した。これを受けて2000年(平成12)に「中山間地域等直接支払制度」、2007年に「農地・水・環境保全向上対策」(のちの「多面的機能支払交付金」と「環境保全型農業直接支払制度」)が創設され、日本型直接支払制度の整備が進められた。

 それから四半世紀の間に情勢は大きく変化し、2024年に食料・農業・農村基本法は改正されることになった。農林水産省は改正の理由について、「近年における世界の食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国における人口の減少その他の食料、農業及び農村をめぐる諸情勢の変化に対応し、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的な発展のための生産性の向上、農村における地域社会の維持等を図るため、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定める」必要があると説明している。

 直接的には2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻などを契機とする世界的な食料需給の逼迫(ひっぱく)、穀物・肥料の価格高騰と調達難による食料安全保障問題が引き金となったと考えられる。食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案要綱でも、法の目的の改正として「基本理念の例示として、食料安全保障の確保等を追加すること」と記されており、農林水産省の「基本法検証部会」の議論でも中心となったのは食料安全保障に関する領域であった。また、2022年に「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(令和4年法律第37号。略称は「みどりの食料システム法」)が公布・施行され、それに応じた政策体系の見直しが求められていたという事情もあった。

[安藤光義]2025年10月21日

基本法改正のポイント

基本法は政策の基本理念として、①食料の安定供給の確保、②農業の有する多面的機能の発揮、③農業の持続的な発展、④農村の振興、の四つを掲げていた。

 2024年の改正で基本理念は、食料の安定供給の確保が食料安全保障の確保に改定され、環境と調和のとれた食料システムの確立が新たに加わったことで、①食料安全保障の確保、②環境と調和のとれた食料システムの確立、③多面的機能の十分な発揮、④農業の持続的な発展、⑤農村の振興の五つとなった。

 これによって政策体系は次のように変化した。以前は、農業の持続的な発展が農村の振興と手を携えて実現されれば食料の安定供給は確保され、農業が有する多面的機能も発揮されるという関係であった。そこに環境と調和のとれた食料システムの確立という理念が加わった結果、食料安全保障の確保にとっては食料システムが、多面的機能の発揮と農業の持続的発展にとっては環境負荷の低減がそれぞれ重要であると位置づけられ、②が①、③、④の基本理念と連携する関係になった。

 改正された基本法のねらいの一つは食料政策の領域の拡大にあると考えられるが、農林水産省によればそのポイントは次のように整理することができる。

 基本法で「食料安全保障の確保」を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義したこと。これは国連食糧農業機関(FAO)のフードセキュリティ概念を強く意識したものである。

 国民に対する食料の安定的な供給には国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業と食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持を図る方向を示した。また、基本法に輸出を明記して、食料政策のなかに位置づけ、具体的な施策として輸出産地の育成、関係者が組織する輸出品目団体の取り組みの促進、需要開拓の支援などが講じられることになった。

 食料の合理的な価格の形成については、需給事情および品質評価を適切に反映させつつ、食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食品事業者、消費者その他の食料システムの関係者により、その持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならないとされた。これについては農畜産物の適正な価格形成に向けた関連法の改正が行われることになった。

 また、基本法の改正とあわせて食料供給困難事態対策法(令和6年法律第61号)が制定され、食料供給に困難な兆候がみられたときには、内閣に食料供給困難事態対策本部を設置して対策を講じる体制が整備されることになった。さらに「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」(令和6年法律第63号。略称は「スマート農業技術活用促進法」)も制定され、「みどりの食料システム法」による環境負荷の低減とスマート農業の推進が農業政策の柱となった点も、基本法改正のポイントである。

 農村政策の領域では、農地の保全に資する共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、障害者等の農業に関する活動のための環境整備、鳥獣害の対策が新たに書き加えられた。

[安藤光義]2025年10月21日

©SHOGAKUKAN Inc.

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