ジャパンナレッジ
捜査員が本人のものとは異なる身分を示して行う捜査。日本で現在行われている仮装身分捜査は、捜査員が身分を秘して、いわゆる「闇バイト」の募集(犯罪実行者の募集)に応じ、情報を得て検挙につなげる捜査を行う場合に、本人とは異なる顔貌(がんぼう)、氏名、住所等が表示された運転免許証、マイナンバーカード等(仮装身分表示文書等)を犯人側に提示して行う捜査活動を意味する。刑事訴訟法第197条1項に基づく任意捜査として行われる。
インターネット等を通じて犯罪実行者の募集が行われていると認められる強盗、詐欺、窃盗等が対象となる。この対策強化の一環として、政府の方針を受けて、2025年(令和7)に警察庁が「仮装身分捜査実施要領」を制定し、運用が開始された。身分証の偽造は、正当業務行為と位置づけられるものとしている。
実行役が犯罪を起こす前に指示役から聞き出した集合場所で検挙や職務質問を行って、犯罪の抑止につなげるもので、グループ内に入って活動する潜入捜査を行うものではない。指示役や首謀者の特定、実行役の募集の抑止につながることが期待されている。
犯人側と連絡をとるが、相手方に犯罪を行わせる働きかけをするものではない点で、おとり捜査とは異なる。また、身分証の偽造を伴うことも、通常のおとり捜査とは異なる。