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道路交通法
どうろこうつうほう

車両の運転者や歩行者が道路において守るべきルールを定めるとともに、主として交通安全のための各種の仕組みを定めた法律。昭和35年法律第105号。略称は「道交法」。所管は国家公安委員会(警察庁)。道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図るほか、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としている。

[田村正博]2025年11月17日

沿革

戦前期には、道路取締令と自動車取締令(いずれも内務省令)が車馬の通行方法と運転免許等について定めていた。しかし、日本国憲法の制定を受けて法律の委任のない命令による規制ができなくなったことから、車馬および軌道車に関する規定と罰則等を定める道路交通取締法(旧法)が1947年(昭和22)に制定された(施行は翌年)。同法は、基本的な事柄のみを規定し、道路の交通方法、運転免許等の内容は、命令に委任しており、当初は道路交通取締令(内務省令)、1953年以降は道路交通取締法施行令(政令)が具体的な規制を定めていた。その後の急速な自動車交通の発展のなかで、対面交通化(歩行者を車馬とは逆の右側通行とする)、大型免許の導入(普通免許で運転できる範囲の限定)、旅客用自動車の運転に必要な二種免許の創設などの制度改正が旧法下で行われた。

 1960年に、道路交通取締法を廃止し、制定・施行されたのが道路交通法である。旧法には、歩行者・自動車の通行方法や自動車の運転者の義務等に関する規定が十分でなく、交通の実態に対応できていないという問題とともに、国民の権利や自由の制限の多くを命令に委任して定めているという問題があったことから、道路交通のルールを定める総合的・基本的な法律として、本法が制定されることとなった。名称から「取締」が削られている。また、旧法は交通の安全だけが目的とされていたが、本法では交通の円滑も目的に加えられた。そのほか、警察官の取締り権限の整備、道路使用に関する規定の整備、歩行者保護の強化、自動車の使用者における義務規定の導入等が図られた。

[田村正博]2025年11月17日

おもな内容

第1章「総則」では、法律の目的、定義に加えて、交通規制(道路標識によるもの、信号機によるもの、警察官の現場での指示によるもの)などに関する規定が置かれている。

 第2章「歩行者等の通行方法」では、通行の区分、横断の方法、横断禁止の場所、警察官による通行方法の指示等に関する規定などが置かれている。なお、身体障害者用の車椅子(いす)や歩行補助車を通行させている者は、歩行者に関する規定が適用される。

 第3章「車両及び路面電車の交通方法」では、通行方法(通行区分、車両通行帯など)、速度、横断、追越し(車間距離の保持、進路変更の禁止、割り込み等の禁止を含む)、踏切の通過、交差点における通行方法、横断歩行者・自転車の保護のための通行の方法、緊急自動車、徐行および一時停止、停車および駐車、違法停車および違法駐車に対する措置、灯火および合図、乗車・積載および牽引(けんいん)(乗車または積載の制限と警察署長による制限外許可、過積載の場合の措置命令、危険防止措置など)、整備不良車両の運転の禁止等に関して、各種の規定が置かれている。なお、自転車については、軽車両としての交通方法が適用されるほか、特定の要件のもとでの歩道通行の許容、交差点における通行方法、児童・幼児を乗車させる場合のヘルメット着用等に関する規定がとくに設けられている。

 第4章「車両等の運転者及び使用者の義務」では、運転者の義務(無免許・酒気帯び・過労運転等の禁止、危険防止の措置、共同危険行為の禁止、安全運転の義務、運転者の遵守事項など)、交通事故の場合の措置(運転者等の報告義務)と使用者(車両の所有者などその車の運行を支配、管理する者)の義務(運転者に安全運転や法令遵守をさせるように努めることなど)などについて定めている。

 第5章「道路の使用等」では、道路における禁止行為、道路使用許可、違法工作物等に対する危険防止のための警察署長の措置などに関する規定が置かれている。

 第6章「自動車及び一般原動機付自転車の運転免許」では、運転免許の種別、申請、免許証、試験、更新、免許の取消し・停止などに関する規定が置かれている。なお、違反や事故への点数については、本法ではなく、政令で定められている。このほか、更新時講習、高齢者講習、初心運転者講習、停止処分者講習、取消処分者講習などの講習に関して、第6章の2「講習」で定められている。

 「罰則」は第8章に定められている。刑罰の対象となる行為のうち、重大・危険でないものについての処理の手続の特例が第9章「反則行為に関する処理手続の特例」で定められている。

 そのほか、「遠隔操作型小型車の使用者の義務」(第2章の2)、「高速自動車国道等における自動車の交通方法等の特例」(第4章の2)、「特定自動運行の許可等」(第4章の3)、「交通事故調査分析センター」(第6章の3)、「交通の安全と円滑に資するための民間の組織活動等の促進」(第6章の4)、「雑則」(第7章)に関する規定が置かれている。

[田村正博]2025年11月17日

改正の動向

本法の制定以後、道路交通におけるさまざまな情勢に対応して、数多くの改正が行われてきている。以下に代表的なものを述べる。

 1967年の改正法によって、交通反則通告制度が導入された(施行は翌年)。大量の違反を刑事手続で処理することが困難であることから、悪質・危険性の高い違反以外は、交通反則金の納付があれば公訴を提起しないこととしたものである。

 1970年の改正法によって、法の目的に「道路の交通に起因する障害の防止に資すること」が加えられた。交通公害の防止のために交通規制を行うことを可能としたものである。

 飲酒運転に関して、制定当初はいわゆる酒酔い運転(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態での運転)のみが刑罰の対象とされ、それ以外の酒気帯び運転は刑罰対象ではなかったが、その後、車両(自転車などの軽車両を除く)の酒気帯び運転が全面的に禁止されるとともに、体内に保有するアルコールが基準値以上で運転すれば刑罰の対象となった。2001年(平成13)の改正法(施行は翌年)と2007年の改正法(同年施行)によって、刑罰が抜本的に強化され、酒酔い運転が5年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑。以下、同)または100万円以下の罰金、酒気帯び運転が3年以下の懲役または50万円以下の罰金とされ、飲酒運転に関連する行為(車両等提供、酒類提供、要求・依頼同乗)も刑罰の対象として規定された。なお、ひき逃げその他の悪質な違反も、同様に重罰化が図られ、ひき逃げについては、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となった。

 違法駐車のうち運転者が離れているもの(放置駐車)に関して、2004年に法改正が行われ(施行は2006年)、運転者への責任追及がなされない場合には、車両の使用者に対して、都道府県公安委員会が放置違反金の支払いを命ずる制度が導入された。あわせて、違反車両の取締り(放置車両の確認および標章の取付け)を民間に委託する制度が設けられている。

 自転車による事故を防止する観点から、2007年の改正法により、自転車の歩道通行要件の見直しと警察官の指示権限の整備が行われた(翌年の施行)。さらに、違反を繰り返している場合に、講習の受講を義務づける制度が2013年の改正法により、導入されている(施行は2015年)。

 ながら運転による事故を防止するため、自動車または原動機付自転車の運転中の携帯電話使用等が1999年の改正法で禁止され、2019年(令和1)の改正法で罰則が引き上げられるとともに、事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は、交通反則の適用されない悪質事犯とされた(施行令で免許停止の対象となっている)。

 自動運転に関して、2019年の改正法(翌年施行)により、SAE(Society of Automotive Engineers) International(SAEインターナショナル、自動車関連の標準規格の開発等を行っているアメリカに本拠を置く非営利団体)の基準でレベル3の自動運転(条件付運転自動化)を可能とするために、自動運行装置を使用する運転者の義務や作動状態記録装置による記録に関する規定が整備された。自動運転の場合(自動運行装置を使用している場合)には、自動運行装置の使用条件(国土交通大臣が付する走行環境条件)を満たさなくなったときまたは車両が故障したときにただちに適切に対処できる状態であれば、携帯電話使用禁止等の規定の適用が除外される。また、2022年の改正法(翌年施行)により、レベル4に相当する運転者がいない状態での自動運転(特定自動運行)に係る許可制度が創設された。

 あおり運転(妨害運転)が社会問題となったことを受けて、2020年の改正法により、他の車両等の通行を妨害する目的で、他の車両等に交通の危険を生じさせるおそれのある方法で通行区分違反や急ブレーキ禁止違反などをすることを重く処罰する規定が設けられた(施行令で免許の取消し対象となっている)。

 高齢者による事故を防止するため、更新時の高齢者講習の受講が義務化された(1997年改正法、翌年施行)。2007年改正法(2009年施行)により、75歳以上の高齢者について、更新前に認知機能検査を行うこととなったが、検査結果が第1分類(記憶力・判断力が低くなっている)で、特定の違反行為があった者に限り、臨時適性検査(専門医の診断)を受けることとされた。2015年の改正法(2017年施行)によって、更新時の認知機能検査で第1分類となった者はそれまでの違反の有無を問わず、一律に、臨時適性検査を受けることが義務づけられた。また、一定の違反をした75歳以上の高齢者については、臨時認知機能検査が行われ、第1分類の場合は同様に臨時適性検査を受けることとなった。さらに、2020年の改正法(2022年施行)により、75歳以上で一定の違反歴のある者(原付免許、小型特殊免許、自動二輪免許、大型自動二輪免許、または大型特殊免許のみを有する者の場合を除く)は、更新に際して、運転技能検査を受けることとなった。更新期間満了までにこの検査に合格しないと、運転免許証の更新を受けることができない。

 2022年の改正法では、前記の自動運転の許可制度のほか、特定小型原動機付自転車と遠隔操作型小型車(自動配送ロボット等)に関する規定、マイナンバーカード(個人番号カード)と運転免許証の一体化に関する規定(マイナ免許証制度)が設けられた。

 このうち、「特定小型原動機付自転車」(電動キックボード等)に関しては、2023年に施行され、最高速度が20キロメートル毎時以下であることなどの基準を満たしていれば、16歳以上の者は運転免許がなくても運転を可能とした。違反は交通反則通告制度や放置違反金制度の対象となる。車道通行を原則とするが、最高速度が6キロメートル毎時以下に設定されて、表示灯を点滅させているなどの条件を満たす場合には、自転車と同様に、歩道通行も認められる。なお、特定小型原動機付自転車については、自動車損害賠償責任保険に加入し、ナンバープレートを取り付けなければならないことになっている。

 マイナ免許証(特定免許情報記録個人番号カード)に関しては2025年に施行され、マイナンバーカードのICチップに特定の運転免許情報を記録することで、運転免許証と同様なものとして扱われる。

 2024年の改正法では、自転車の交通事故防止のための規定の整備が行われた。自転車のながら運転(スマホ運転)と酒気帯び運転が、自動車等の場合と同様に禁止され、同様の処罰の対象となった(同年の施行)。あわせて、自転車の運転者(16歳未満の者を除く)がした一定の違反を、交通反則通告制度の対象とすることとした(2026年施行)。

[田村正博]2025年11月17日

©SHOGAKUKAN Inc.

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