性染色体、性腺(せいせん)、内性器あるいは外性器のいずれかが大多数の男性や女性とは異なる、非定型的な先天的状態。したがって、性分化疾患は一つの疾患ではなく、60以上の疾患あるいは症候群の総称である。DSDと略称される。
2006年、専門家による国際会議で、統一された国際名称disorders of sex development(DSD)が発表された。それまでは半陰陽hermaphroditismという診断名が用いられていたが、患者のなかに半陰陽という言葉は蔑視(べっし)的な意味を含むと感じる人がいたためである。さらに、DSDの概念が提唱された2006年当初は、性分化異常症とよばれていたものが、DSDは異常ではなく多様性の一つである、あるいは個性であるとの考え方が普及し、近年では国際的にはdifferences of sex development(DSD)とされることが多い。日本では「性分化疾患」という名称が多く用いられている。
諸外国のデータから、DSDのうち男児か女児かの判別不明の非定型的外陰部を有する症例は、出生児のおよそ4500人に1人と推定されている。日本における信頼性の高い疫学研究はない。性染色体異常に伴うDSD(後述)のうち、男性にもっとも多いクラインフェルター症候群(代表的な染色体核型は47,XXY〈多くの健常男性の染色体核型は46,XY〉)は男性およそ650人に1人、女性にもっとも多いターナー症候群(代表的な染色体核型は45,X〈多くの健常女性の染色体核型は46,XX〉)は女性およそ2000人に1人である。DSDの家族歴、あるいは妊娠母体の胎盤機能不全はDSDの危険因子である。
性染色体の核型により、「性染色体異常に伴うDSD」「46,XY DSD」「46,XX DSD」の三つに分類される。
症状としては出生時の非定型的外陰部、法律上の性と合致する二次性徴の未出現あるいは進行不全、法律上の性と合致しない二次性徴の出現、不妊などを呈する。DSDのなかでも個々の疾患あるいは症候群により症状の差異は大きい。
診断は次の検査を組み合わせて行われる。
①染色体検査
②内分泌学的検査(血液中の性ホルモン〈テストステロン、エストラジオールなど〉の測定など)
③画像検査(内性器および性腺の形態を確認するための超音波検査、MRIなど)
④遺伝子検査
2026年1月20日
①非定型的外陰部を有する新生児の法律上の性の選択
新生児の法律上の性の決定権を有する親権者とともに、将来のジェンダー・アイデンティティ(性同一性)を予測したうえで法律上の性を選択する。ただし、非定型的外陰部を有する新生児の将来のジェンダー・アイデンティティを、新生児期の外陰部の形状のみから予測することはむずかしいことがわかっている。そのため、種々の検査などを通して慎重な検討がなされることが望ましい。戸籍法には出生後14日以内に出生届(性別・氏名)を提出と明記されているが、期限延長も可能である。
②外科的手術
選択した法律上の性により適合するように、外陰部形成術および不要な性腺摘出術を行う。
③薬物治療
選択した法律上の性により適合するように、二次性徴を誘導・維持するホルモン補充療法を行う。
④心理社会的な支援
選択した法律上の性に合致したジェンダー・アイデンティティを確立・維持できるように、家族とともに本人を支援する。本人にDSDを理解したうえで受容してもらえるように、段階的かつ繰り返しDSDについて説明する。
おのおのの疾患あるいは症候群により経過・予後は異なる。46,XY DSDで組織学的に未熟な性腺を有する患者は、性腺腫瘍(しゅよう)発症のリスクを有する。