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日本大百科全書(ニッポニカ)

土星

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土星
どせい
Saturn 英語

太陽系の惑星。8惑星のうち、太陽から第6番目の距離にあり、木星の外側を公転している。土星は、ヨーロッパではローマ神話の主神ユピテル(ジュピターJupiter=木星の英語名)の父にあたるサトゥルヌス(サターン)の名が与えられており、中国では鎮星(ちんせい)とよんだ。
 太陽からの平均距離は9.5549天文単位(14億2940万キロメートル)、公転周期29.458年、軌道の離心率は0.0556、黄道面に対する傾斜角は2.488度である。土星の赤道半径は6万キロメートルで地球の9.4倍、体積は地球の745倍であるが、質量は地球の95.16倍しかなく、平均密度は0.70、赤道重力は地球の0.95倍である。
 土星は、太陽系では木星に次いで2番目に大きい惑星であり、いわゆる木星型惑星に属するが、地球からの距離も遠く、公転周期もかなり長いため天球上の動きも緩やかであり、火星や木星のようには目だたない。極大光度はマイナス0.5等であるが、有名な環(わ)の傾きによって衝(しょう)のころの明るさは約1等級も変化する。
 土星の赤道面は軌道面に対して26.7度傾いており、その環も正しく赤道面に一致している。表面には赤道に沿って淡い縞(しま)模様が見られるが、鮮明な斑点(はんてん)が見られることはまれである。自転周期を求めるのは容易でないが、10時間14分(赤道付近)ないし10時間38分(高緯度地方)とされている。一方、土星からの電波の周期変化からは10時間39.4分という値が得られている。
 大気中には古くから分光観測によってメタンとアンモニアが存在することが知られているが、アンモニアは木星に比べて著しく少ない。これは、土星の表層が木星より低温であり、氷結しているためと考えられる。
 土星についての詳細な情報は、アメリカの惑星探査機パイオニア11号(1979)、ボイジャー1号(1980)、同2号(1982)などによって得られた。
 土星の本体は木星とよく似ているが、表面の縞や渦流などは木星ほど目だたない。しかしボイジャーの写真ではかなり激しい雲の流れや渦などが見られた。土星は質量が木星の3分の1たらずであり、内部の温度、圧力などもかなり小さく、金属状水素の中心核なども小さいと考えられる。探査機が測定した磁場が予想より弱かったこともこれを物語っている。また土星の磁気圏は木星に比べて整った形をしており、磁気軸も自転軸に一致している。
 土星の環は、1656年オランダのホイヘンスによって確認されて以来、望遠鏡の発達とともにしだいに詳しく観測され、外側からA環、B環、C環の三つに分かれていることが明らかにされ、B環がもっとも明るく、A環がこれに次ぎ、C環は淡く半透明に見えるところから「ちりめん環」などともよばれた。また1969年にはもっとも内側にD環の存在が知られた。またA環とB環の間には明瞭(めいりょう)な暗いすきまがあって、カッシーニの空隙(くうげき)とよばれ、またA環の中にもエンケの空隙とよばれるすきまが見える。A環の外側の半径は土星半径の2.26倍に達し、またA環の外側からC環の内側までの幅は計6万3000キロメートルもある。これらの環は土星の1公転中にしだいにその傾きを変え、もっとも傾いた状態と水平の状態が2回ずつおこる。水平に見えるころは細い直線状に見えるが、一時期は大望遠鏡でもまったく見えなくなるところから、その厚さはきわめて薄いものと考えられてきた。また、これらの環が土星を巡る細かい粒子の群であることは理論的に、また分光観測によっても確かめられていた。惑星探査機は環の構造を格段に詳査し、解明した。パイオニア11号はA環の外側に細いF環を発見し、ボイジャー1号・2号はさらに外側に細いG環と、淡く幅広いE環などを確認した。またA・B・C環などが数千本に及ぶ細い環の集まりであることを解明した。これらの環をつくる粒子もおおむね数センチメートルから数メートル程度の氷塊であることが測定された。
 土星には、1655年にホイヘンスが発見したチタン(明るさは8等級)ほか8個の衛星の存在が望遠鏡観測で知られていた。ところが1980年に、環が水平になった際の地上観測とボイジャー探査機の観測により、さらに8個が確認された。ボイジャーはそのほかにも未確認の数個を観測している。
 衛星の表面や性質についても多くの情報が得られた。太陽系内の衛星では木星のガニメデに次いで大きいチタン(半径2575キロメートル)については、地上観測でもメタンの大気の存在が知られていた。ボイジャー探査機は、その大気が窒素を主成分とし、表面気圧1.6気圧にも及ぶものであることを明らかにした。しかし表面は茶褐色の霞(かすみ)に覆われて観測はできなかった。土星の他の衛星であるレア、ディオネ、テチス、エンケラドゥスなどの表面には多くのクレーターの存在が確かめられ、なかでもミマスにはミマスの直径の3分の1にも相当する大クレーターが見られた。これら土星の衛星はいずれも密度が小さく、大部分は氷でできていると考えられる。
 なお、環の粒子の分布が衛星の引力に支配されていることは以前から知られていたが、新しく発見された小衛星は、その運動が力学的に興味深いものが多い。2個の小衛星が細い環の両側にあって、環の粒子を制御している「羊飼(ひつじか)い衛星」や、ごく接近した軌道を回っていて互いに接近すると交互に軌道を乗り換える一対の衛星、他の衛星と同一軌道上でその前方あるいは後方約60度に位置して、三体問題のいわゆる正三角形解に相当するものもある。
[村山定男]

©SHOGAKUKAN Inc.

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