放送を受信するために受信機の所有者が支払う料金制度。放送事業運営のための財源確保の一つの方式である。放送事業の財源確保方法には、(1)受信者がなんらかの名目で支払う受信料、(2)広告収入、(3)国からの交付金や補助金、(4)放送以外の商業サービス収入、(5)寄付金や特定団体の負担、などがある。日本(日本放送協会=NHK)やイギリスはおもに受信料収入と国からの交付金を財源とし、フランス、ドイツ、韓国などは受信料収入と広告収入をおもな財源とするなど、各種財源を組み合わせて放送事業を運営する国が多い。徴収手法は、イギリスでは国が徴収して必要経費を差し引いて放送事業体へ交付しているほか、住民税(フランス)や電気料金(韓国)と一括徴収する国もある。日本では放送局自身が外部委託を含め直接徴収している。受信料の不払いに対し、日本では罰則はないが、イギリスでは略式起訴による罰金制度がある。なお有料テレビ(WOWOW(ワウワウ)やスカパー!など)の視聴料金は、受信料とは別の扱いである。
日本では放送法(昭和25年法律第132号)第64条1項により、NHKの放送を受信できる受信機を設置した者(世帯、事業者)は、NHKと受信契約をしなければならないと定められている。受信料月額はNHKが作成し、総務大臣が検討し意見を付したNHK収支予算を国会が承認して決まる(同法70条4項)。2017年度の受信料(口座振替、2か月払い)は地上契約で2520円、衛星契約で4460円で、半年や1年分をまとめ払いすれば割引となる。受信料の未払いに罰則はなく、未払いの時効は5年。生活保護世帯や被災世帯などは受信料の減免を受けられる。受信料の推計世帯支払率は78.2%(2016年度末)。NHKは2011年(平成23)以降、未払い受信料の支払いを求める訴訟を相次いで起こしている。
ただインターネットやスマートフォンが普及し放送のデジタル化が進展したことで、1950年(昭和25)にできた受信料制度が時代遅れになっているとの指摘が多い。ワンセグ放送でテレビを視聴できる携帯電話をもつ人にNHKの契約義務があるかどうかが争われた訴訟で、さいたま地方裁判所は2016年に「支払い義務はない」との判断を示した。一方で2017年には同様の裁判で、支払い義務はあるとした判決が水戸地方裁判所で下されている。司法判断が割れているなか、最高裁判所大法廷は2017年内にも、受信料の支払いを義務づけた放送法の規定が合憲かどうかの初判決を示す見通しである。このためNHKは2017年にNHK受信料制度等検討委員会(NHK会長の諮問機関)を設置し、公平負担の方策や、地上放送・衛星放送・インターネットでの同時配信の3放送サービスの料金一本化などを検討している。
[矢野 武]