金融機関の預貯金口座のうち、預けたまま長期間、お金の出し入れのない口座。休眠預金、睡眠口座などともよばれる。全国銀行協会の自主ルールや休眠預金活用法(正式名称「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」平成28年法律第101号)で、10年間預貯金の出し入れがなく、残高1万円未満の口座および、残高1万円以上で預金者と連絡がとれない口座と定義されている。日本では、銀行預金は商法上5年間、信用金庫や信用組合などの預金は民法上10年間、権利行使がなければ財産権は時効消滅すると定められている。しかし慣例上、金融機関は預金者や遺族の要請があれば、時効後も預貯金の払い戻しに応じている。また2007年(平成19)9月末以前に預けられた郵便貯金は、旧郵便貯金法で預け入れ後20年2か月が経過した場合、財産権が時効消滅し、国庫に納めると規定されている。旧郵便貯金や農林漁協系金融機関を除いても、毎年新たに800億~1200億円程度の休眠口座が発生し、払い戻し分を除いても、毎年500億~700億円程度が休眠口座になっているとみられている。
海外では、休眠口座の預金の最後の出し入れから3~10年経つと、口座預金はアメリカでは州へ、カナダでは中央銀行へ、オーストラリアでは政府へ管理が移る。イギリス、韓国、アイルランドなどでは、休眠口座の預金を社会福祉事業、失業や貧困対策、中小企業対策などに活用している。日本では長く、時効消滅した休眠口座の預貯金は金融機関の収入となってきた。しかし2012年から、東日本大震災の復興財源として休眠口座の活用の検討に入り、2016年に議員立法で休眠預金活用法が成立し、2019年から公益目的での活用が始まる。休眠口座の預貯金を預金保険機構に移し、新設の指定活用団体を通じて、難病の子供、生活困窮者らの支援にあたっているボランティア団体や非営利団体などに活用してもらう。なお休眠口座預貯金が公益活動の資金源にあてられた後も、預金者が通帳、カード、身分証明書などを提示すれば休眠口座の預金は払い戻しされる。
[矢野 武]