証券取引所に上場している銘柄について、取引所での取引が行われなくなること。上場廃止には、大別して証券取引所の規程に基づく場合と、上場会社自らの意思による場合とがある。いずれにせよ、上場廃止となれば取引停止措置がとられ、投資家は当該銘柄を証券取引所で売買することができなくなる。
証券取引所は、上場後も上場銘柄について上場監理を行っている。それは、上場銘柄の情報開示などが適切に行われているかどうかを、投資家保護策の一環として常時チェックする必要があるからである。証券の上場時には上場審査基準が設けられているが、なんらかの事情でそれらの基準を満たせなくなった銘柄は上場廃止の対象となる。その場合、上場時と同様、各証券取引所によって金融商品ごとに上場廃止基準が定められており、この基準に該当した場合は、上場会社の意思とはかかわりなく上場廃止措置がとられる。
一般に、具体的な上場廃止基準は、(1)株式の流通量、(2)違法行為(有価証券報告書の虚偽記載等)、(3)経営内容(債務超過等)などの観点を中心に定められている。たとえば、上場株式が取引所で円滑に取引されるためには、公正な価格形成を促すうえでも、ある水準以上の取引量が安定して維持されている必要がある。また、株主数が極端に少ないと、経営意思決定に恣意(しい)の介在が懸念されるなど、一般株主の利益を阻害しかねない。同様に、有価証券報告書等に提出の遅延や虚偽記載があった場合は、投資家の判断に重大な影響を与えることとなる。さらに、経営破綻(はたん)(倒産)や合併などで企業が消滅すると、投資家は保有証券の売却による資金回収がおぼつかなくなる。
これらの事態は証券の上場制度への信頼感を著しく毀損(きそん)することとなるため、その他の主要項目とともに上場廃止基準として明示されているのである。
一方、上場企業自身が株式公開のメリットがなくなったと判断した場合は、証券取引所に対して上場廃止申請を行うことがある。具体的には、経営者が高頻度化する情報開示要請や上場維持コストの負担を過大と感じたり、経営・財務戦略を迅速かつ自由に立案・実施するうえで上場を桎梏(しっこく)ととらえたりするなどのケースがある。MBO(経営者や従業員が自社の株式を取得して事業経営を承継すること)はその行動の典型例の一つといえる。このほか、TOB(株式公開買付制度)などにより、完全子会社化が図られた場合にも、上場廃止となることがある。
上場廃止は投資社会への影響が大きいことから、その事実を投資家に周知させるための手段が講じられている。上場廃止基準にあたるおそれがある場合や上場廃止申請を受けて審査中の場合は、監理銘柄に指定される。監理銘柄に指定されたもののうち、上場廃止が決定した銘柄は整理銘柄に指定される。つまり、上場廃止に向けた一般的な流れは、上場銘柄→監理銘柄→整理銘柄→上場廃止銘柄、といった道筋をたどる。
なお、上場廃止銘柄は、日本証券業協会が開設するグリーンシート市場(未公開株流通市場)での取引が認められる場合もある。ただし、グリーンシート銘柄制度は2018年3月末で廃止され、それ以降の取引はできなくなる。
[高橋 元]