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日本大百科全書(ニッポニカ)

がんサバイバー

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がんサバイバー
がんさばいばー
cancer survivor 英語

がんを経験したすべての人をさす呼称。キャンサーサバイバーともいう。アメリカの全米がんサバイバーシップ連合(NCCS:National Coalition for Cancer Survivorship)によって1980年代に提唱された。がんと診断された直後からその人が生涯を全うするまでを包括した概念であり、がんが治癒し長期生存した人だけを意味するものではない。
 がんサバイバーの概念が生まれた背景には、「がん」という病気のもつ意味が変わってきたことがあげられる。すなわち、罹患(りかん)者の増加に伴って、たとえば日本においては2人に1人が一生のうちになんらかのがんと診断され、かつ、そのうち3人に1人は生産年齢人口(就労可能年齢)であるなど、がんがより身近な病気になったこと。一方で、医療の進歩に伴って生存率が向上し、がんがかならずしも人々のイメージにあるような“不治の病”ではなくなり、診断・治療後も社会生活が続くことを前提とした、長くつきあっていく病気(慢性疾患)であるととらえられるようになってきたことなどである。
 治療がひととおり終了し、患者が社会復帰して日常生活を営んで行くうえでも、再発への不安、治療の後遺症や副作用の管理、就労や労働環境の問題など、さまざまな精神的・身体的・社会的問題を抱えている状態であることに変わりはなく、その意味で、がんサバイバーという概念は、治療中であろうと治療後であろうと、がん経験者に継続的な医療的・社会的ケアと支援の必要性があることを示すものである。
[渡邊清高]

がんサバイバーシップ

がんサバイバーが、診断や治療を受けたその後を生きていくプロセスを「がんサバイバーシップ」とよぶ。
 アメリカではかねてからがんサバイバーに対する種々の取り組みがなされており、1996年には国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)に「がんサバイバーシップ室」が設置されるなど、がんサバイバーシップに関する研究、教育が推進されている。
 日本では2007年(平成19)に「がん対策基本法」(平成18年法律第98号)が施行され、それに基づいて2017年に策定された第3期がん対策推進基本計画では、全体目標の一つとして「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」、分野別施策として「がんとの共生:がん患者等の就労を含めた社会的な問題(サバイバーシップ支援)」が掲げられている。2013年には国立がん研究センターにがんサバイバーシップに関する研究部門が設立され、がんサバイバーシップに関する研究、社会啓発、人材育成の支援などを推進している。
[渡邊清高]

©SHOGAKUKAN Inc.

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