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告訴がなければ公訴を提起することができない罪。親告罪でない一般の犯罪を「非親告罪」という。犯罪は一般に非親告罪であるが、犯罪が比較的軽微な場合、たとえば過失傷害罪(刑法209条1項)や器物損壊罪(同法261条)などや、訴追に伴い被害者の名誉が侵害される名誉毀損(きそん)罪(同法230条)について、後述する告訴権者の意思により訴追判断を行おうとする制度。「告訴」は、単に犯罪事実の申告(被害届など)とは異なり、捜査機関に対し犯罪事実をある程度具体的に申告し、その訴追を求める意思表示である。告訴権者は、親告罪とされる犯罪の被害者や、この者と特定の関係ある者、たとえば被害者の法定代理人や配偶者、直系の親族、兄弟姉妹などである(刑事訴訟法230条~234条)。告訴は、書面または口頭で検察官または司法警察員に対し、原則として、犯人を知った日から6か月以内になす必要がある(同法235条、241条。電話による告訴につき争いがあるが、判例はこれを否定している)。親告罪につき告訴なくして公訴(起訴)された場合には、公訴棄却の判決がなされる(同法338条4号)。なお、強姦(ごうかん)罪(旧刑法177条)などの性犯罪は、2017年(平成29)の改正前の刑法第180条では、被害者の意思やプライバシーを尊重して、親告罪(告訴がなければ公訴を提起することができない罪)とされていたが、改正後は、罪名が強制性交等罪(現行刑法177条)などになるとともに、加害者等からの干渉や報復を回避するため、親告罪の規定が削除され非親告罪となった。
[名和鐵郎]