日本に住む、住民票をもつすべての人に12桁(けた)の個人番号を割り当て、国や地方自治体が社会保障や税などの情報を効率よく管理しようとする制度。2013年(平成25)に成立した社会保障と税の共通番号(マイナンバー)法(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」平成25年法律第27号)に基づき、地方自治体が2015年10月から住民へ通知を始め、2016年から運用を開始した。マイナンバー(個人番号)で住民の所得、納税、保険料納付などの情報を一元管理することで、税金・保険料徴収の効率化、年金や医療などの社会保障関係の給付の適正化、各種申請の簡素化などに役だてるねらいがある。現行法では社会保障、税、災害対策の3分野関連に利用が限定されているが、政府は戸籍・パスポート事務、オリンピックやカジノ施設入場時の本人確認証、民間企業での身分証明書などへの利用拡大を検討している。アメリカ、フランス、スウェーデン、ドイツ、韓国など主要国が導入している個人番号制度の一種である。
マイナンバーは原則、生涯同じ番号を使わねばならない。ただ漏洩(ろうえい)して不正利用のおそれがある場合、本人申請で変更可能である。写真とともに申請すれば、ICチップを内蔵した「個人番号カード」が交付されるが、交付率は2017年8月1日時点で9.4%にとどまっている。民間企業は2016年から、従業員や家族、アルバイトなどの源泉徴収票や社会保障関係書類などにマイナンバーを記載して国や自治体に提出する義務が生じた。2017年11月から国や自治体と医療保険者などの間で税や社会保障の個人情報をやりとりする中核システム(情報提供ネットワークシステム)が本格運用された。住民は申請書にマイナンバーを記載するだけで、住民票などの紙の書類を提出しなくても児童手当、公営住宅、介護保険など1000以上の行政手続が可能となる。ただシステム不備から健康保険や奨学金給付など一部サービスは先送りされた。2017年11月に、住民がパソコンやスマートフォンなどから自分の税や社会保障情報、マイナンバーの使用履歴などを確認できる「マイナポータル」の運用がスタート。2018年には個人の預貯金口座とマイナンバーを結び付けるため、口座開設時に任意でマイナンバーの提示を求められる。政府は税務調査や資産調査を効率的に行うため、口座開設時のマイナンバー提示の義務化を目ざしている。
マイナンバー制度に対しては、個人情報やプライバシーの漏洩、国の国民監視強化などを懸念する指摘が日本弁護士連合会や野党などから出ている。日本では2015年に日本年金機構がサイバー攻撃を受けて年金情報が流出する事件が起き、アメリカでは他人になりすましてクレジットカードをつくるなどの被害が出ている。政府はマイナンバーを1か所に集中させないようにして、リスクを抑えるよう自治体などに指導している。
[矢野 武]