電波望遠鏡の一種。小型の電波望遠鏡(アンテナ)を複数組み合わせて、単一のアンテナでは実現不可能な巨大な電波望遠鏡と等価な解像力を得る装置。基本となるのは、2台のアンテナを使った二素子電波干渉計である。光の干渉と同じ原理で、それぞれのアンテナで受信した天体からの電波を重ね合わせると、天体の方向により強め合ったり、弱め合ったりする。この結果、地球上の干渉計からは地球の自転による天体の方向の変化に伴い、規律正しい正弦波状の信号、つまり電波の干渉縞(じま)がでる。この干渉縞の振幅と位相には、天体の位置、明るさの分布についての情報が含まれている。
原理的には、わずか2台のアンテナでも、アンテナ間隔(基線長)と方向をいろいろ変えて観測し、蓄積された干渉縞のデータをフーリエ変換という数学的な処理を行うことにより、天体の二次元電波写真が得られる。これが、「開口合成法」の原理である。通常は、より効率的に電波写真を得るため、複数のアンテナを組み合わせ、しかも地球の自転による基線の変化を利用する。一般に望遠鏡の解像力は、波長に対する口径の比で決まる。したがって、口径10センチメートルの光学望遠鏡と同じ解像力を得るには、波長1センチメートルの電波では2キロメートルもの口径が必要となる。このため、電波天文学では古くから干渉計の技術が使われてきた。
国立天文台野辺山(のべやま)宇宙電波観測所にあるミリ波干渉計は、口径10メートルのアンテナ6台を組み合わせ、最大600メートルの電波望遠鏡に匹敵する解像力を有する。アメリカのニュー・メキシコ州にある超大型電波干渉計VLA(Very Large Array)は、口径25メートルのアンテナを27台組み合わせたもので、電波干渉計としては世界最大規模。電波干渉計の基線長を数千キロメートル以上に伸ばしたものが超長基線電波干渉計(VLBI)である。
[石黒正人]