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光が境界面で屈折するときの入射角の正弦と屈折角の正弦の比。光線が空気中から水中へというように異なった媒質の境界面へ入射すると、境界面を通過したあとの透過光の進行方向は、入射光に対し折れ曲がる現象が生ずる。これが光の屈折であって、折れ曲がる割合は入射光の方向によらず物質により定まった値となる。これが屈折率である。
屈折現象はユークリッド、プトレマイオス(トレミー)らによってすでに観測されていたが、これを正しく記述したのは17世紀のオランダのスネルである。光線が境界面に入射する際、交点における接平面の法線方向に対して入射光のなす角を入射角、屈折光のなす角を屈折角とよぶ。スネルは、この入射角α(アルファ)と屈折角β(ベータ)との間には一定の関係があるという、光の屈折の法則(スネルの法則)を発見した。のちにデカルトはこれをsinα/sinβ=nという形式に変形できることに気づき、入射角αと屈折角βの正弦の比nを屈折率と名づければ、これは入射角によらず一定であるという形にまとめた。
真空に対するある物質の屈折率を絶対屈折率、または単に屈折率といい、真空以外の物質(水、空気など)に対するある物質(ガラスなど)の屈折率は相対屈折率という。これは、ガラスの絶対屈折率を水(または空気)の絶対屈折率で割ったものに等しい。空気の絶対屈折率は約1.0003である。屈折率を測定するには、プルフリッヒ屈折計やアッベ屈折計を使うのが便利であるが、三角柱プリズムをつくって屈折角を測る方法(最小偏角法)がいちばん精度がよい。
[石黒浩三][久我隆弘]