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シェンゲン規則

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シェンゲン規則
しぇんげんきそく

ヨーロッパ諸国の加盟国間では出入国審査なしで国境を自由に往来できることを定めたシェンゲン協定および関連規則のこと(「the Schengen Agreement(シェンゲン条約)」と「the Convention implementing the Schengen Agreement(シェンゲン実施協定)」)。ルクセンブルクのシェンゲンで1985年に締結されたのち、1990年には実施のための行動を具体的に定める協定(実施協定)が合意され、1995年に加盟国間の国境撤廃が実現した。加盟国が形成する領域をシェンゲン領域とよぶ。
 シェンゲン規則には、域外国境(シェンゲン協定締約国と第三国との国境)の共通管理、域内国境検査の撤廃、統一ビザの発給、不法移民に関する取決め、国境を越える犯罪に対する司法・警察の加盟国間協力、シェンゲン情報システムの導入などがある。
 1985年にフランス、西ドイツ(現、ドイツ)、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの間で締結された際は、シェンゲン協定はEU(当時はEC)法制度の枠外であった。1999年に発効したアムステルダム条約(1997年調印)により、シェンゲン協定関連規則はEU法制度に組み入れられた。2017年10月時点で、ヨーロッパ連合(EU)加盟国28か国のうち22か国と非加盟国4か国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)において、出入国管理のない空間が形成されている。EU加盟国のなかで、キプロス、ブルガリア、ルーマニア、クロアチアはまだ参加が認められていない。イギリス(2019年にEU離脱)とアイルランドは、国境を越える犯罪対策などの条項には合意しているが、人の自由移動に関する条項の適用除外(オプトアウト)の措置を受けている。
 アムステルダム条約によって、シェンゲン協定関連規則がEU法制度に統合されたことで、移民および難民に関するEUの共通政策化が目標となった。域内国境の管理がないシェンゲン領域においては域外国境の管理が重要となる。そこでEU加盟国のなかで域外国境の管理を担う国に対しては、EUの各種基金による財政支援制度が整備され、監視や取締りの促進についてはヨーロッパ国境沿岸警備機関(フロンテックス。2004年設立、2016年より権限拡大)がその役目を担うことになった。またシェンゲン情報システムは、協定加盟国間の刑事警察協力のために設置された情報共有ネットワークであり、シェンゲン領域の安全を確保し、国境を越える犯罪やテロリズムなどの防止を目的としている。
 ただし2015年以降、中東・北アフリカなどからEU諸国に大量の人々が移動してきた際、緊急対応としてドイツ、オーストリア、ハンガリーなどが一時的に国境管理を再導入した。また同年にフランスやドイツで発生したテロ事件では、シェンゲン領域を移動していた実行犯もいた。このようなことから、シェンゲン規則に対する信頼強化が求められている。
[柄谷利恵子]

©SHOGAKUKAN Inc.

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