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日本大百科全書(ニッポニカ)

アーティスティックスイミング

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アーティスティックスイミング
あーてぃすてぃっくすいみんぐ
artistic swimming 英語

水泳競技の1種目。水深3メートルのプールで、伴奏音楽にあわせてあらゆる泳法を基本とし、種々のフィギュア(姿勢や動作などの型)を組み合わせて演技するスポーツである。2017年、国際水泳連盟(FINA:Fédération Internationale de Natation)において競技名がシンクロナイズドスイミングからアーティスティックスイミングに変更され、日本水泳連盟においても2018年(平成30)4月より名称変更した。略称はAS、またはアーティスティック。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

歴史

1920年代にヨーロッパで生まれたアーティスティックスイミングartistic swimmingとよばれる群泳が基礎になって、その後1934年、シカゴ万国博覧会で60名によるエキシビション(公開演技)が行われたとき、シンクロナイズドスイミングsynchronized swimmingと名づけられた。1941年にアメリカでルールが制定、競技化され、1946年シンクロ全米選手権が開催された。日本には1954年(昭和29)在日米軍の慰問のため来日したアメリカチームによって初めて紹介された。1957年に第1回日本選手権が行われ、水泳競技(女子)の正式種目の一つになった。また1973年から世界選手権の種目となり、1984年のオリンピック・ロサンゼルス大会からソロとデュエットの正式参加が認められ、日本は両種目とも銅メダルを獲得した。続く1988年ソウル大会、1992年(平成4)バルセロナ大会でも、両種目で連続して銅メダルを獲得。1996年のアトランタ大会ではチーム競技のみとなったが、やはり銅メダルを獲得した。2000年のシドニー大会からはデュエットとチームの2種目を実施。シドニー大会と2004年アテネ大会では、オリンピックでの過去最高順位となる銀メダルを、両種目で獲得した。2008年北京(ペキン)大会では、デュエットは銅メダル、チームは5位を獲得。2012年ロンドン大会では、デュエット、チームともに5位、2016年リオ大会では、デュエット、チームともに銅メダルを獲得し、表彰台に返り咲いた。また、2001年の世界選手権(福岡)では、デュエットで立花美哉(たちばなみや)(1974― )・武田美保(たけだみほ)(1976― )組が、オリンピック、世界選手権を通じて日本初の金メダルを獲得した。なお、2015年の世界選手権(ロシア・カザン)より男女混合ペアのミックスデュエット種目が正式に加えられ、それまで女子種目であったASに男子選手への門戸が開かれた。日本からは初代ペアの足立夢実(あだちゆみ)(1989― )・安部篤史(あべあつし)(1982― )組が出場し、テクニカルルーティンが5位、フリールーティンが7位であった。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

競技方法

競技種目は、ソロ(1名)、デュエット(2名)、ミックスデュエット(男女ペア)、チーム(4~8名)、フリーコンビネーション(8~10名)およびハイライトルーティン(8~10名)がある。ソロ、デュエット、ミックスデュエット、チームは、テクニカルルーティン(以下テクニカル)とフリールーティン(以下フリー)の2種目がある。テクニカルは、規定要素required elementsがあらかじめ組み込まれたもので、音楽は自由、泳者全員が同じ動作を行う。フリーはすべて自由な振付けと選曲が許されている。
 フリーコンビネーションはソロ、デュエット、トリオ、グループを自由に組み合わせて演技し、3名未満のパートを最低2回、8~10名のパートを最低2回含んで泳ぐ種目である。ハイライトルーティンはアクロバティック動作や連結動作を組み入れて行う種目である。
 時間制限はいずれも陸上動作10秒以内を含んで、テクニカルはソロ2分00秒、デュエット2分20秒、ミックスデュエット2分20秒、チーム2分50秒、フリーはソロ2分30秒、デュエット3分00秒、ミックスデュエット3分00秒、チーム4分00秒、フリーコンビネーション4分00秒、ハイライトルーティン2分30秒。
 現在オリンピックでは、デュエットとチームの2種目が行われ、テクニカルとフリーの二つのプログラムの得点を合計して順位決定する。オリンピックを除くFINA大会においては、テクニカルとフリーは独立した競技として行われている。
 エイジグループ(13~15歳、12歳以下)は、フィギュアとフリールーティン(以下フリー)の2種目を行い、フィギュア(最高100点)とフリー(最高100点)を合計した得点で順位を競う。種目としてのフィギュアは基本姿勢と基本動作を組み合わせた基本の型を競う競技である。4年ごとにFINAによって定められる規定フィギュア2種と選択フィギュア2種(いくつかのグループに分けられ、各グループに2種ずつフィギュアが選択されている)から、大会ごとに4種を実施する。フィギュア競技はエイジグループでのみ実施される。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

ルールと採点

ルーティン競技の採点は5名ずつで編成された三つのジャッジパネル(審判団)で行う。ジャッジは採点基準に基づき0.1点刻みの10点満点で採点する。テクニカルの審判団はエクスキューション(完遂度・同時性)、インプレッション(難易度、演技構成および音楽の解釈、プレゼンテーション)、エレメンツ(規定要素の完遂度・同時性)の3パネルに分かれ、採点する。各パネルの最高点と最低点を除き、平均点を算出し、エクスキューションとインプレッションは3を、エレメンツは4を乗じた点数がそのパネルの得点になる。そして、三つのパネルの得点を足したものがテクニカルルーティン得点(最高100点)になる。
 フリーの審判団はエクスキューション(完遂度・同時性)、アーティスティックインプレッション(演技構成、音楽の解釈、プレゼンテーション)、ディフィカルティ(難易度)の3パネルを構成する。各パネルの最高点と最低点を除き、平均点を算出し、エクスキューションとディフィカルティは3を、アーティスティックインプレッションは4を乗じた点数がそのパネルの得点になる。そして、三つのパネルの得点を足したものがフリールーティン得点(最高100点)になる。
 フィギュア競技は、4群に分けられた約200種のフィギュアのなかから、あらかじめリストアップされた規定フィギュア2種、選択フィギュア2種の合計4種を競う。各フィギュアには、むずかしさの度合いに応じて難易率が定められており、たとえばフィギュア番号101のバレーレッグシングル(水上に片脚をあげる種)の難易率は1.6である。採点は6名または7名の審判員(ジャッジ)によりデザイン(形)とコントロール(動き)の採点基準に基づき、0.1点刻みの10点満点で採点し、最高と最低を除き平均点に難易率を掛けて得点(最高100点)とする。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

水着・用具

フィギュア競技は、黒い水着と白の帽子を着用し、ルーティンの水着は透けていないこと、そしてその時点でスポーツとして妥当なものとされる。余分な付け布やアクセサリー、ジュエリー等は認められていない。全権限はレフェリーにあり、着替えを命ぜられることもある。また、水中で息を長くこらえた状態で回転したり方向変換をするため、ノーズクリップとよばれる鼻栓を任意で使用する。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

特色

ASは、体操競技女子のゆか運動、フィギュアスケート、新体操などのように、伴奏音楽の曲想をとらえて優美、かつリズミカルで、力強く安定した動作、すなわち技の美しさを競うスポーツである。1曲を泳ぎ通す持久力と、他人とも同調させるというチームプレーの協調精神も含め、リズムにあわせて楽しく泳ぐということは集団指導のうえでも大いに役だつし、泳ぎのバランスを補正できるという利点がある。前に進むだけが水泳ではないというおもしろさを教えてくれるのもASの特色の一つといえる。
[斎藤中子][本間三和子]2018年8月21日

©SHOGAKUKAN Inc.

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