住宅やマンションの空き部屋などに、有料で旅行者らを泊めるサービス。もともとリゾート地や大都市の住宅を利用した宿泊として行われていたが、2008年(平成20)前後にインターネットを通じて貸し手(個人)と借り手(旅行者)を仲介するサービスがアメリカで誕生し、世界的に普及した。(1)大規模イベントや季節に応じて変動する宿泊需要の柔軟な受け皿となる、(2)低料金で提供できる、(3)空き家などを有効活用できる、などの利点があり、民泊サイト業者大手には、サイト訪問者数が数千万人から1億人に達するアメリカのAirbnb(エアビーアンドビー)、HomeAway(ホームアウェイ)などがある。日本では、急増する訪日観光客(インバウンド)の受け皿として注目され、2020年開催のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、民泊を普及するための規制緩和が進んだ。ただ既存の観光地、ホテル・宿泊業者、観光地を抱える自治体などは規制緩和や民泊自体に反対しており、法令に基づかない「ヤミ民泊」(違法民泊)が横行しているのが実態である。なお民泊は、個人の間で物やサービスを貸し借りするシェアリング・エコノミーの典型例である。
日本では、民泊に関する法律が未整備で、有料宿泊を提供するには厳しい衛生基準などをクリアして旅館業法の許可を得る必要があった。しかし政府は訪日旅行者の増加はデフレで沈滞する国内個人消費を刺激するうえ、人口減少による空き家対策にもつながるとして、民泊を認める規制緩和やルールづくりに取り組んできた。2015年、国家戦略特別区域法第13条を活用し東京都大田区や大阪府で旅館業法適用除外により民泊を認める条例を制定した。2016年には旅館業法施行令を改正し、民泊を民宿と同じ簡易宿所と位置づけ、営業許可を取りやすくするよう面積基準などの規制を緩和した。さらに営業日数の上限を年間180日とするなどの条件付きで、民泊を全国解禁するため、2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。民泊を提供する物件の所有者、管理業者、仲介業者に登録・届け出を義務づけ、公衆衛生の確保や周辺住民とのトラブルを防止するルールをつくった。ただ地方公共団体が独自条例で営業日をさらに規制することを認めているうえ、登録・届け出件数は低調で、事件や周辺住民とのトラブルの温床となるヤミ民泊の歯止めにはなっていない。
2018年9月19日