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H2分子のうち二つの水素原子の核スピンが平行である分子をいう。質量数1の通常の水素原子はスピン量子数1/2の核スピンをもち、これはあたかも小さな磁石のような性質を示す。この水素原子が2個結合した水素分子では、小磁石の向きが平行になる場合と、反平行になる場合の2種類の状態を生ずる。平行になる場合をオルト水素、反平行になる場合をパラ水素とよんで区別する。
常温付近では統計力学的重率に従ってオルト水素とパラ水素との比は3対1になるが、低温になると、より安定なパラ水素の状態になろうとする。しかし、オルト、パラ間の変換速度は一般に小さく、常磁性物質を触媒にしないと促進されない。オルト水素とパラ水素の間には化学的な性質の差はほとんど認められないが、比熱にはかなりの差があり、たとえば100Kでのオルト水素の比熱6.3カロリー/モルはパラ水素の値0.33カロリー/モルの19倍にもなる。