日本大百科全書(ニッポニカ)

天球儀
てんきゅうぎ

地球儀が地球表面の水陸分布や地形、経緯度線などを表すように、われわれを取り巻く空を一つの球に見立て、星や星座、天の赤道や黄道、時圏、等赤緯線(天球上の赤緯の等しい点を結ぶ線。赤緯等圏)などを描き表し、実際の天球での諸現象、たとえば天体の出没や高度・方位などを読み取れるようにした装置。ただし、球の内側から見るようにはつくれないので、天球の外から見た天球の状況(現実に見るものの裏返しになる)を球面に描く。一般に天球儀は、単なる天の図ではなく、実用に供されていた。すなわち、模型天球を、天の南北極(SおよびN)を通る軸の周りを回転できるようにし、この軸が水平環(水平環を含む平面は模型天球の中心を通るようにする)と緯度に等しい角だけ傾けられるようにしておく。水平環に方位目盛りを刻み、さらに水平環から天体までの角を測れるような尺度をつくっておくと、天体の任意の時刻の高度・方位、出没方位が読み取れる。また日周運動の状況、あるいは季節など適当な条件を与えれば時刻を読み取ることもできる。このような測定ができるようにつくられた一式の装置が天球儀で、かつてはヨーロッパなどで天文学上の実用器機としてはもとより、芸術品としても盛んに製作された。日本でも江戸時代に最初の天球儀がつくられた。
[大脇直明]

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