日本大百科全書(ニッポニカ)

誤嚥性肺炎
ごえんせいはいえん

誤嚥が原因で生じる肺炎。誤嚥とは食物や唾液(だえき)などが声門を越えて気道内に入ることであり、誤嚥性肺炎は誤嚥時に細菌などの病原性微生物がいっしょに気管に入り込んで肺で炎症を起こすものである。嚥下(えんげ)性肺炎ともいう。
 誤嚥性肺炎の発症には、誤嚥物の量や質、喀出(かくしゅつ)力(咳(せ)き込んで誤嚥物を外へ出そうとする力)、体力・抵抗力や栄養状態、口腔(こうくう)内の汚染状態など、さまざまな要因が関係している。誤嚥は健常者にもしばしば起こるが、誤嚥が起これば必ず肺炎が起こるわけではなく、高齢者や抵抗力の低下した人で生じやすい。
 誤嚥性肺炎の原因菌としては、肺炎球菌、口腔内レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などの頻度が高く、複数菌感染の場合もある。誤嚥性肺炎の典型的な症状は、発熱、痰(たん)を伴う咳(せき)、呼吸困難などであるが、とくに高齢者では、なんとなく元気がない、食欲がない、などのみで典型的な症状を伴わない場合もある。
 治療としては、抗生物質による薬物療法、排痰を促すための呼吸理学療法などが行われる。
 誤嚥性肺炎の予防としては、(1)誤嚥を予防する 食事に適した正しい姿勢で、はっきりと覚醒(かくせい)した状態で食事をとる(覚醒レベルが低いまま食事をすると誤嚥しやすい)、唾液や胃食道逆流物の誤嚥を防ぐ(頸部(けいぶ)前屈位を保つ、食後すぐに横にならない、就寝中も頭部を軽く挙上しておくなど)、(2)誤嚥物の喀出力をつける 脱水を予防する、深呼吸や咳嗽(がいそう)訓練などを日ごろから行うなど、(3)誤嚥しても肺炎を発症させない 口腔内の清潔、栄養状態を良好に保ち、体力の向上に努めること、などがあげられる。
[編集部]2018年12月13日