日本大百科全書(ニッポニカ)

取調べ可視化
とりしらべかしか

捜査機関による被疑者取調べのようすを録音・録画すること。証拠改竄(かいざん)、自白強要などの強引な捜査や冤罪(えんざい)の発生を防ぎ、公判で供述の信用性や任意性を確保するねらいがある。全過程を録音・録画する全面可視化と部分的な一部可視化がある。海外ではイギリス、イタリア、オーストラリアが全面可視化を導入し、アメリカは一部の州、フランスは重罪などに限って実施している。韓国は検察官の裁量で実施・不実施を決められるが、被告が調書内容を否定した場合、検察官が録音・録画していなければ調書を証拠として使えない仕組みをとっている。海外では司法取引、おとり捜査、潜入捜査、通信傍受など取調べ以外の多様な捜査手法を認める国が多い。
 日本では、無実の人が17年以上服役した「足利(あしかが)事件」や、選挙違反で被告となった12人全員の無罪が確定した「志布志(しぶし)事件」などの冤罪事件が発生するたびに、取調べ可視化を求める声が強まった。検察は2006年(平成18)から、警察は2008年から一部可視化を試験導入。その後、大阪地方検察庁特捜部の証拠改竄・隠蔽(いんぺい)事件が2010年に発覚。これを機に2016年5月に刑事司法改革関連法(改正刑事訴訟法など)が成立し、2019年6月から全面可視化が義務化されることとなった。対象は一般市民が参加する裁判員裁判の対象事件、収賄等の、検察官が独自に捜査する事件や知的障害のある容疑者らの取調べで、(1)指定暴力団員による事件、(2)容疑者が拒否した場合、(3)容疑者や親族に害が及ぶ場合、などは除かれる。逮捕前や参考人の聴取については録画・録音されない。
[矢野 武]2018年12月13日