日本大百科全書(ニッポニカ)

IR実施法
あいあーるじっしほう

カジノを中心とした統合型リゾート(IR:Integrated Resort)の整備・運営ルールを定めた法律。正式名は「特定複合観光施設区域整備法」(平成30年法律第80号)で「IR整備法」「カジノ実施法」「統合型リゾート実施法」ともよばれる。2018年(平成30)7月に公布、公布から3年以内に施行される。ギャンブル依存症対策などのため、IR施設は当面全国3か所に限り、日本人の入場料を6000円に定めた。IR推進法に続きIR実施法、ギャンブル等依存症対策基本法などが制定されたことで2020年代なかばには日本初のIR施設が開業する見通しである。賭博(とばく)などの民営ギャンブルは刑法で禁じられているが、IR実施法により日本初の民営ギャンブルが公認されることになる。
 IRはカジノを中心に宿泊施設、テーマパーク、商業施設などが一体的に整備されたリゾート施設で観光振興、インフラ整備、カジノ収益などの経済効果が見込める半面、ギャンブル依存症の増加や反社会的勢力の介入などの問題を生むおそれがある。IR実施法はIRの区域数上限を3か所とし、最初の区域認定から7年後に上限数を見直す。カジノ施設の延床面積をIR施設全体の3%以下に制限し、入場回数を「7日間に3回かつ28日間で10回」に限定。マイナンバーカードで本人・入場回数を確認し、日本人(日本在住の外国人を含む)の入場料は6000円とシンガポール並みの水準とした。外国人は無料。競馬やパチンコと異なり、カジノ事業者が一定額を預けた顧客に賭(か)け金を貸し付ける制度も容認した。2019年夏、行政から独立性の強い三条委員会として「カジノ管理委員会」を内閣府外局に設け、カジノ免許付与やカジノ事業者監督にあたらせる。カジノ管理委は、国会同意が必要な委員長ら総勢100人で構成し、カジノ事業者の財務状況や犯罪歴などを調べ、反社会的勢力の介入やマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪を防ぐ。政府はカジノ管理委設置後、IR整備区域の選定基準などを定めた基本方針をつくり、これに基づいて自治体が誘致を申請し、国が区域やカジノ事業者を選定する。北海道(苫小牧(とまこまい)市、留寿都(るすつ)村、釧路(くしろ)市)、千葉県(千葉市)、東京都(港区台場(だいば))、神奈川県(横浜市)、愛知県(名古屋市、常滑(とこなめ)市)、大阪府(大阪市)、和歌山県(和歌山市)、長崎県(佐世保(させぼ)市)などが誘致を検討している。カジノ事業者は収益の15%ずつを国と地方自治体へ納付金(カジノ税)として支払う。国と自治体はカジノ税を観光振興や依存症対策に活用する。
[矢野 武]2019年1月21日