最近の科学や技術の発展はめざましく,学問分野の専門化・細分化も著しい.これに伴って新しい学術用語が数多く登場してきている.また学術・技術の領域での国際交流・移転・協力が拡大した結果,欧文特に英文で研究成果を発表しまたは受容するにあたって,英語の専門用語を正しく理解する必要性はますます増大している.これらの膨大な新用語は従来の英和辞典では収容しきれないのが現状である.一方,以前から理化学や科学の専門辞典が発行されているが,これらは新しい学問分野について大きな項目ごとに解説しているのが常であるので,数多くの新科学用語の英語を確かめるのに便利とは限らない.こうした辞典の現状の不備を抜本的に改善しようとしたのがこの『理化学英和辞典』である.
科学・技術全般をカバーしようとすればページ数が余りにも増えるから,ここでは科学・技術の基礎をなす物理学と化学とを中心に,それと関連のある宇宙科学(天文学を含む),地球科学,生命科学,情報科学などの諸分野にわたって,基本語,専門語,新語を収録した英和辞典とすることとした.加えて研究者が日常使用する用語で従来の専門語辞典には載っていない術語も収めるよう配慮した.これによって採録した語は約4万語にのぼる.
本辞典は,英和辞典として見出し語に訳語と発音を示したうえで,重要な項目(用語)には,やや詳しい解説をつけ,あるいは数行の簡潔な説明を付して理化学辞典として機能するようにしてある.巻末には和英用語対照表があるので,理化学用語の和英辞典としても活用することができる.
1981 年に企画してから,多くの専門家(次ページに原稿を執筆いただいた方々のお名前を別記した)のご協力と研究社のスタッフの長く地道な作業のおかげで,ようやく本辞典ができ上がった.刊行が予定より大幅に遅れたが,本辞典の必要性はより一層増大していると考えられる.これが研究者のみならず,科学・技術に関係している多くの方々のお役に立つことを念願している.
1998 年 5月
編者を代表して 山口嘉夫