JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
日国を使うにはわけがある!
2007年07月

JKボイス-日国を推挙する理由:ジャパンナレッジ 本では実現できなかった『日国』の新たな可能性

松井 栄一さん
『日本国語大辞典』編集委員

『日本国語大辞典』(以下、日国)の第二版を編纂しているとき、この辞典にはどんな“蛙”が載っているのか知りたいと思ったことがあります。

そこで、付録の索引巻を作るときに、語の後要素から引ける索引を掲載しようとしたのですが1巻の中に収まりきれず、やむなく断念したということがありました。逆引きと称する辞書も少し出ていますが、語数が少なくてとても満足できません。上代から現代まで幅広く項目を網羅した『日国』を利用してこそ、興味深い結果が出てくると思うのです。

こういう、いつかは実現したいと思っていた長年の願いが、このたびのオンライン版の後方一致検索を使うことで、かなうことになりました。たとえば「蛙」で後方一致の検索を行うと、「青蛙」「赤蛙」「雨蛙」などさまざまな種類の蛙のほか、「あめに蛙(かわず)」や「いの中の蛙(かわず・かえる)」といった慣用句まで、「かえる・がえる・かいる・かわず」など、さまざまに言われている“蛙”が瞬時に一覧できます。「蛙」のほかに、「行灯」と入れて行灯(あんどん・あんどう)の種類を調べたりするのも面白いでしょう。辞典を作った私自身にも予想ができない面白い結果が出てくるかもしれないので、とても楽しみです。

さて、『日国』は項目数50万、用例数100万を誇る日本最大の国語辞典ですが、これでもまだ十分とは言えません。次の改訂作業に向けて、私は今も資料の読み込みを行い用例を集めています。資料は明治・大正・昭和(戦前)・昭和(戦後)の4つのカテゴリーのものを、毎日各々4ページずつ読み込んで、そこに新しい用例や語句があるとカードに書き写していきます。平均すると1日に30枚くらいのカードができるでしょうか。このカードがある程度たまると50音順に整理しなおして、『日国』第二版と照らし合わせ、次の版に使うべき項目を別の小さなカードに書き写すといった具合です。この小さなカードがすでにかなりの数になっています。また、現在の第二版の項目で用例が一つしかない項目は極力なくしたい。用例が一つだけだと、書いた人独自の語彙だという可能性もあるからです。そこで一つの項目に対して最低二つの用例は欲しいし、差し替えたい用例もあります。それに「日国友の会」の会員の方からいただいた用例の情報もかなりの数がありますから、今後もますます『日国』は成長していきます。

辞典のデジタル化の恩恵は、実は使う側だけでなく、作る側にもあるのです。検索された結果は、紙の辞典とは違ってランダムに並ぶわけですから、前後の不統一感がはっきりと見えたりもします。わかりきったことと思っていたことが、実はそうでなかったということも出てくるでしょう。言葉の使い方の新しい発見もあるかもしれません。

ですから、「こんなことをやってほしい」「こんな機能がほしい」という利用者からの要望は、積極的にどんどん取り入れてもらいたいと思います。私たちが手がけた『日国』が利用者の方々の声とともにどんどん成長して、ますます大きな樹になってくれればこれほど嬉しいことはありませんから。