JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
日国を使うにはわけがある!
2008年03月

JKボイス-日国を推挙する理由:ジャパンナレッジ 時代小説執筆の強い味方

逢坂 剛さん
小説家

子どもの頃から辞書が好きで、つねに座右に辞書がありましたね。今も大切にしまってある中学一年の時に買った最初の国語辞典を見ると、相当に使いこんだ跡があります。本を読みながら、知らない言葉や読めない漢字とぶつかる度に、ずいぶんとお世話になったものです。

作家になってからは、さらに辞書との付き合いは深くなりました。最初、『カディスの赤い星』や『百舌の叫ぶ夜』といった現代ものばかりを書いていましたが、そのうちに時代ものにも興味がわいてきました。ただ、時代小説の分野には先達も多く、新規参入にあたっては何か強力なセールスポイントが必要だと思いました。

そこで、登場人物たちの会話などで、できうる限り当時の言葉や文体を使おう、と思い立ったのです。その時代の小説は、その時代の言葉で、というわけです。ところが、これが縛りとしてはなかなかきつい。捕物帳等によく出てくる「事件」という言葉は江戸時代の使用例が見当たりませんし、今当たり前に使われている文末の「です。」も、ふつうに使われるようになったのは実は明治以降のことなんです。ともあれ歌舞伎の脚本や古文書などを調べて、気がついたものを自分で整理し、自家製の語彙辞典を作るところから始めなければならなかったわけですが、そんなとき、強い味方となったのが、「日本国語大辞典」(以下、日国)でした。わたしが時代小説の近藤重蔵のシリーズを執筆し始めた頃、ちょうど日国の第二版が出たというタイミングも良かったのかもしれないですね。日本語の宝庫ともいうべき収録内容は、文筆に携わる者なら絶対に手元に備えるべきで、当時も今も日本語辞典として究極の一冊だと思っています。

ヘビーユーザーとして嬉しいのは、その日国が、さらに日々進化を遂げているところです。例えば、「四半時(しはんとき)」という言葉があるんですが、そもそも30分のことを指す「小半時」が小一時間と誤解されることが実に多い。だから30分を表すのは「四半時」が最適なんです。

ある時、それが日国に載っていないことに気づいて指摘したところ、精選版の日国で追加更新をされていました。そんなしっかりした対応が、とても頼もしいですね。あまねく使われ、使用頻度も高かった言葉を多数収録している秘訣は、編集部のそういう取り組みが功を奏しているからだと思います。

もともと日国は全十三巻、精選版でも三巻という大部で、家庭や仕事場では場所ふさぎというハンデがあったのですが、オンラインだとスペースの問題も解消される。わたしは、頑固にワープロ専用機を使い続けているんですが、同時にパソコンを常時開いたままにして、オンラインで辞書をひいたり、調べものをしながら、日国を活用しています。