JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
日国を使うにはわけがある!
2007年07月

JKボイス-日国を推挙する理由:ジャパンナレッジ 「日国オンライン」への期待

杉戸 清樹さん
独立行政法人国立国語研究所長

『日本国語大辞典』が、いよいよ電子的な手段で活用できるようになる。その名も、すでに定着した『日国』の略称を冠した「日国オンライン」。

実際に試してみた。仕事で使う資料を作るため、「法人」というものが制度的に何種類ぐらいあるのか、互いの異同はどこにあるのか調べたい。資料作りに使っていたパソコンで、ワープロの窓は画面の脇に残したままインターネットに切り替えて「日国オンライン」にログインし、基本検索画面で検索語「法人」、範囲「見出し」、条件「後方一致」と入力する。「医療法人」「営利法人」など28項目が五十音順に並んで出た。そこから「兵法人」「無法人」など当面の目的から外れるもの3項目を除く手順は経たものの、目指したところには予想以上に早くたどり着けた。検索結果のうち必要な説明文をカット&ペーストでワープロの資料文書に写して、ふたたびワープロ作業に戻る。

資料やワープロの上に辞書を重ねて置かずにすんだこと、一文字ずつワープロに写していく手間が激減したことを実感しつつ、改めて考え直す。今の「後方一致」検索は、普通の国語辞典ではできないことで、逆引き辞典で語末が「法人」の語を探したことになる。そのこと自体は、近年の小型の電子辞書やパソコン搭載辞書でもできる場合がある。

しかし、このたびは、そのことが、50万の項目数と100万の用例を備え、充実した意味説明や明記された確実な典拠で定評のある、『日国』第2版そのままの内容を対象にして容易に実現できる。これは、大変なことであるに違いない。ほかの検索方法や、それらの組み合わせに期待も広がろうというものだ。

もう一つのことを確かめたくて、勤務先の「国立国語研究所」を検索してみた。説明文に「東京都北区西が丘にある」という所在地情報。実は2年前に東京都立川市に移転している。編集部の人に話したところ、すぐに「オンライン版は、印刷の重版の最新版を反映させる。国語研究所の所在地も、その際に改める」という返事をいただいた。いじわるな指摘だったかと反省しつつ、印刷媒体版とは異なるオンライン版の新しい利点を確かめることができたと思う。つまり、記述内容が更新されるという利点である。「日国オンライン」では、提供する内容を、適宜、 更新していく方針だという。

その方針を具体化していく基盤に、2002年から運営されている「日国.NET」という人のネットワークがあることも忘れられない。『日国』に向けて、掲載されているものより古い確実な用例の存在を知らせたり、もっと新しい用法があることを指摘したりする読者や研究者のネットワークである。『日国』をさらに育て充実させるためのそうした情報の蓄積が、オンライン版で一層活用されていくことを期待したい。

辞書の項目や記述も更新される時代となった。いずれ、「日国オンライン」からカット&ペーストで引用する際には「200X年X月版より」等と明記することになるだろう。