- 判例の選択・配置
(1) 最高裁判所の判例を中心としつつ、広く下級裁判所の裁判例にも目配りして重要なものを選んだ。
(2) 判例は、原則として関連する法文の後に配置したが、特定の法文から切り離して整理する方が適切な場合は、編・章・節に相当する場合(◆【補充項目の見出し】)、条文に相当する場合(◆【補充項目の見出し】)に分けてまとめた(例:◆【罪刑法定主義】、◆【物権的請求権】)。
(3) 特に成文法典のない行政法・租税法の通則的事項の判例は、全面的に体系的な整理を行い、「◎行政法総論」・「●租税法総論」として収録した。
(4) また憲法については、必要な限度で最高裁判所の少数意見、及び判例となり得なかった下級審の裁判例等を加えた(後出「6 判例の表示方法 (3) *の付いた判例」参照)。
(5) なお、判例以外に通達等も取り上げた。
- 判例の整理・要約・相互関連
(1) 判例の整理に際しては、実務上の便宜と法学教育上の効率性を併せ考え、体系的な分類を徹底した。
(2) 判例の要約は、判例集に記載されている要旨への安易な依存を避けて、判例の全文から正確な判旨を抽出することに努めた。必要な場合には、やや詳細な摘示をも行った。
(3) 要約文中の法令名は、原則として判例の文言にあるものをそのまま掲げたが、一部、一般に用いられる略称を掲げたものもある(例:日米安全保障条約)。
(4) 判例の相互関連を示すため、記号を用いてクロス・リファレンスを施した。
- 判例の出典 主要なものは、大審院判決録・判例集、最高裁判所判例集など公的刊行のもの及び私的刊行の判例タイムズ、判例時報であるが、そのほかにも多くの資料を用いた(本文画面右側[資料]欄の「判例集・法律雑誌略称解」を参照)。なお、未登載のものについては、一部のものを除いて、事件番号を明記した。事件番号が複数ある場合には、最初のもののみを掲げた。
- 判例の用字・用語・文体・読み仮名
(1) 現代仮名遣い、平仮名、口語体を用い、用字・用語は現在の法令・公用文の用字・用語法に従った。
(2) 難読文字には、読み仮名を付した。難読文字は原則として常用漢字表外文字と定義し読み仮名を付したが、不要と思われるものは省いた。
- 判例評釈案内
(1) 調査の範囲 判例評釈案内は、別冊ジュリスト「判例百選シリーズ」を中心に、有斐閣発行のものを調査した。なお、調査した判例評釈雑誌等の範囲は、本文画面右側[資料]欄にある「判例評釈雑誌略称解」を参照されたい。
(2) 掲載の仕方 判例評釈案内は、その判例につき、掲げた判例の要約の論点を含む評釈1つだけを選択して掲載した。
- 判例の表示方法
(1) 見出しの記号 分類のための見出しは、必要に応じ大見出し=一・二・三など漢数字、中見出し=1・2・3などアラビア数字、小見出し=イ・ロ・ハ……、細分類見出し=a・b・c……の4段階とした(なお、民法709条に限り、更に細分化した見出しを用いている)。
(2) 判例番号 判例は、条文又は◆(◆)【補充項目の見出し】ごとに一連番号を付して掲げた。本年版において新たに収録した判例については、白ヌキで表示した。また、一部の通達等には参のマークを付して掲げた。
(3)
*の付いた判例 憲法では、厳密な意味では判例といえないものでも講学上重要な意味を持つものにはアステリスク(*)を付して掲げた。*の付いた判例の内容は次のとおり。
- 最高裁判所判決の意見・補足意見・反対意見
- 最高裁判所のした裁判で傍論性が強いといえるもの(「念のため」説示の場合が典型的な例である)
- 最高裁判所のした裁判で、そのあと明示的に判例変更されたもの(実質的に判例変更と見る余地が大きいものでも、明示的に変更の言及がされていないときは、*を付けていない)
- 下級審のした裁判で傍論性が強いといえるもの
- 下級審のした裁判で、上級審によって否定されたもの
- 当該の論点で違った判断が出されたもの(黙示的であるが、そう解されるものを含む)
- 当該の論点を上級審が取り上げていないことの意味が、その論点は取り上げるべきではないという点にあると解されるもの
(4)
★の付いた判例
行政手続法 同法施行以後の判例にはその判例番号の下に★を付し、施行以前の判例で対応する条文に掲げたものと区別した。
行政不服審査法 平成26年法律第68号による全部改正法の施行以後の判例にはその判例番号の下に★を付し、施行以前の判例で対応する条文に掲げたものと区別した。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 同法に関する判例にはその判例番号の下に★を付し、地方公共団体の条例に関するものと区別した。
民法 平成29年法律第44号及び平成30年法律第72号による改正前の同法の下での判例のうち、改正により位置づけが変わり、又は、変更される可能性がある判例には★を付し、それ以外の判例と区別した。
製造物責任法 同法施行以前の判例にはその判例番号の下に★を付し、施行以前の判例で対応する条文に掲げたものと区別した。
(5)
判例の要約に使用した記号(要約文中の記号)
- 〈 〉 事案の説明 どのような事案・背景の事件かを示す場合、あるいは既出判例の事案を受けての判示であることを示す場合に、その旨を〈 〉内に簡潔に示した。
- 〔 〕 条文改正前の判例である旨の表示 判例を掲げた条文の全部又は一部が改正された場合で、改正前の判例であることの注記が必要なものは、たとえば〔昭和六二法一〇一による改正前の事件〕と、その旨を注記した。なお、次の左欄に掲げた法律では、それぞれ右欄に掲げた事件を単に〔旧法事件〕と表示した。
民事執行法 昭和54年法律第4号による削除前の旧民事訴訟法第6編の事件
民事保全法 平成元年法律第91号による削除前の旧民事訴訟法第6編及び旧民事執行法第3章の事件
刑法 明治40年法律第45号による全部改正前の旧刑法の事件
刑事訴訟法 昭和23年法律第131号による全部改正前の旧刑事訴訟法の事件及び日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律の事件
特許法 昭和34年法律第122号による廃止前の旧特許法の事件
不正競争防止法 平成5年法律第47号による全部改正前の旧不正競争防止法の事件
著作権法 昭和45年法律第48号による全部改正前の旧著作権法の事件
- [ ] 法令改正の注記 要約文中の法令名・条数等で、その後題名改正・条数移動等があり、その結果、現在の法令名・条数等と混乱を生ずるおそれのあるときは、必要に応じて[ ]内に小さな文字で現行の法令名・条数等を注記した。
なお、次の左欄に掲げた法律では、要約文中に新法の条数を掲げ、[ ]内に旧法の対応条数を注記した。
行政不服審査法 平成26年法律第68号による全部改正前の旧行政不服審査法
民事訴訟法 平成8年法律第109号による改正前の旧民事訴訟法
破産法 平成16年法律第75号による廃止前の旧破産法
(6)
出典部分の記号
- ( ) 裁判所・裁判形式・年月日・出典・評釈案内の表示 要約に続けて( )に判例の出典等を記載した。たとえば(最判昭60・7・19民集三九・五・一三二六、民百選Ⅰ[9版]78)は、最高裁判所、判決、昭和60年7月19日言渡し、最高裁判所民事判例集39巻5号1326頁登載、民法判例百選Ⅰ総則・物権[第9版]78事件を表す。また、【平10ワ七八六五】は、平成10年(ワ)第7865号事件を表す。なお、法務省民事局の通達等については、「法務省民事局」を略した。
- 前出・後出の表示 1つの条文中に同一判例が2箇所以上に分かれて掲げられる場合は、初出のもの又はより重要な部分を抽出したものにだけ出典等を掲げ、他は、たとえば(最判昭57・11・26前出3)のように簡略化して掲げた。
- 〈 〉 著名事件の通称 著名な判例でいわゆる通称が付されているものには〈 〉で、たとえば〈信玄公旗掛松事件〉、〈踏んだり蹴ったり判決〉などと表示した。
- …… 判例やその要約に対する注記 掲載した判例の正確な理解を助けるために注記が必要なときは、出典欄の後に……に続けて記述した。判例変更があった場合や、争われた法令が既に改正され掲げた判例の争点がなくなっているときなども、必要に応じてここに注記した。
(7)
判例の相互関係の記号
- 判例の末尾の
- 判例の末尾の )の下にで参照すべき判例を示した。同一判例であることもあり、別の判例であることもある。なお、判決・決定の全体像を示すとの観点から論点の異なるものを掲げた場合もある。
同一条文内では単に5などと判例番号のみを掲げ、他の条文のときは条数(又は掲載箇所を[ ]内に示した◆(◆)【補充項目の見出し】)を、他の法令のときは法令名略語、条数を付けて判例番号を掲げた。
- 複数の判例を参照すべき場合は、次のように表示した。
五〇条判例―五〇条の判例全部を参照せよ、の意味。
一二三条236―一二三条の判例2、3、6を参照せよ、の意味。
民七〇九条4~8―民法七〇九条の判例4から8を参照せよ、の意味。
- 判例分類見出しの後の ある事項についての判例が論点や争点を共通にしながら他の条文の判例として分類・整理されて掲げられている場合には、判例分類見出しの下に二八条5~8などと表示し、他の条文の判例として掲げられていることを示した。
- ◇ マークの後の いくつかの判例が共通して他の判例を参照すべきことを示す。
◇5~7四一五条3―判例5~7について、四一五条判例3を参照せよ、の意味。
◇八九六条1~3―その条文の判例全体について、八九六条判例1~3を参照せよ、の意味。