栗田直樹 著
朝日新聞社主筆から転身し、戦後の55年体制の礎を築いた政党政治家。その前年、吉田茂に代わって自由党総裁となると、翌年に民主党の鳩山一郎との対立を超えて自由民主党を成立させた。自らの経験と人脈を生かす、「情報組織の主宰者」とも呼ぶべき政治手法によって首相の座を目前にしながら急逝。いま埋もれつつあるその足跡を明らかにする。
[大正|昭和][文化人|政治家]
中嶌邦 著
近代女子教育の発展に尽力した日本女子大学の創立者。長州藩士の家に生まれ、幕末の動乱期から明治・大正にかけて生き抜いた生涯を追う。キリスト教と出会って女性観を変え伝道に力を尽くし、米国留学を経て女子高等教育に向かった。なぜ、男子の教育でなかったのか。あるべき社会を問い続けた教育実践と、世界平和を願った実像を浮き彫りにする。
[明治|大正][教育家]
田中宏巳 著
明治海軍の戦術家。四国松山の文武の風土に育まれ、海軍軍人として早くから嘱望され、米国留学で世界の戦術を学ぶ。日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った独自の戦術思想は、海軍兵学として絶対的地位を得るが、戦勝により神聖視される思想の将来を危惧し、晩年は大本(おおもと)教への信仰に捧げた。日本海軍の明暗を分けた、栄光と苦悩の全生涯を描く。
[明治|大正][武人・軍人]
宇野俊一 著
明治時代の軍人政治家。長州藩士を率い、戊辰(ぼしん)戦争で転戦。維新後、ドイツで軍事学を修め、陸軍の草創に貢献する。元老山県有朋(やまがたありとも)の後継者として三度にわたり内閣を組織し、桂園(けいえん)時代を築く。日露戦争や条約改正など対外問題を処理する一方、大逆(たいぎやく)事件の対応などに苦慮した。やがて閥族(ばつぞく)政治の限界を悟り、その脱却を試みつつも挫折した波瀾の生涯に迫る。
[明治|大正][武人・軍人|政治家]
古川隆久 著
激動の明治・昭和の狭間で大正時代を治めた「守成」の君主。明治天皇唯一の皇子として手厚く育てられ、国民と身近な人間像を演出した。しかし、生まれながらの虚弱体質により、天皇としては政治的重圧に耐えることができず、在位は短期間に終わった。宮中関係者の日記など、近年公開された史料も活用し、悲運の生涯を浮き彫りにする本格的伝記。
[明治|大正][天皇・皇族]
長井純市 著
明治・大正期の民衆政治家。幕末、東北戦争で板垣退助と出合い、尊王論を奉じる郷士から、維新後は自由民権運動の闘士へと転じる。県令三島通庸と対立し投獄された福島事件で名を馳せ、国会開設後は代議士となる。民党の闘士として活躍後、衆議院議長、農商務大臣を務め、晩年は普選運動の先頭に立つ。立憲政治の完成を追い求め続けた生涯に迫る。
[明治|大正][政治家]
田中宏巳 著
日本海軍の軍人。郷里新潟県長岡の負けじの気風を糧に海軍士官となる。いち早く航空戦の時代を予見し、連合艦隊司令長官として真珠湾作戦を発案・実行するが、艦隊決戦の伝統は独創的な発想を許さなかった。ミッドウェー海戦後の劣勢を挽回できぬまま、ラバウル前線を視察中に戦死する。太平洋戦争の敗因を検証し、歴史の中の名提督の実像に迫る。
[明治|大正|昭和][武人・軍人]
沢井実 著
テレビ受像用として知られる「八木・宇田アンテナ」を発明した電気通信工学者。海外で高い評価を博した指向性アンテナ技術が、太平洋戦争で敵国兵器に利用されたため、戦時には科学技術を動員する中核的立場におかれる。戦後は、教育者・国会議員として幅広く活躍。明治以来の国家的課題「後発工業国日本の近代化」に挑んだ一科学技術者の生涯。
[大正|昭和][学者]
茶谷誠一 著
昭和天皇の側近を務めた政治家。大久保利通の次男に生まれ、岩倉遣欧使節団に随行し米国留学。第一次大戦後のパリ講和会議では、次席全権大使として活躍する。協調外交や穏健な政治を支持する立場から、内大臣として昭和天皇の信任を得るが、軍部や右翼の批判を受け隠退する。激動の時代を生きた生涯を通して、近代日本の繁栄と挫折の歴史を描く。
[明治|大正|昭和][政治家|外交官]