目崎徳衛 著
中世的人間の典型“数奇の遁世者”西行。草庵閑居と廻国修行を多彩に織りまぜつつ、宗教・文学・政治・芸能・故実など、当代文化の全領域に活躍し、古代末期の波瀾の時代に独自の生き方を貫いたその生涯を鮮やかに描写。多くの史実を明らかにした『西行の思想史的研究』の著者が、一般読書人のために平易に興味深く紹介した好伝記。
[平安|鎌倉][宗教者|文化人]
岩橋小弥太 著
世に“萩原法皇”とも称せられ、『花園院宸記』をはじめ、多くの文筆を遺された花園天皇は、歴代きっての文化人であった。持明院統の出身で早く位を大覚寺統の後醍醐天皇に譲られたが、南朝側に対する理解もまた深かった。本書は宮廷史・官制史に独自の学風をもつ著者が当時の宮廷の中にいきいきと天皇の生涯を描き出した。
[鎌倉|南北朝][天皇・皇族]
竹内道雄 著
鎌倉時代が生んだ偉大な宗教家。名門公家の家に生まれ、世俗的出世を望まれながらも自ら出家。さらに真実の仏教・師を求めて宋に渡り、帰国後、純粋禅を広め日本曹洞宗の開祖となる。時代背景をおりなすとともに、中国での足跡をもたどりながら、宗教思想・子弟育成などその人物像を克明に描く。最新の史料・研究をもとにした、新稿の決定版なる。
[鎌倉][宗教者]
橋本義彦 著
平安時代末期から鎌倉時代初期という激動の時代に生きた公家政治家。従来、良い評価は与えられてこなかったが、それは通親と鋭く対立した九条兼実の日記『玉葉』の記述に依拠したためである。本書は通親の生涯の足跡をたどり、できるだけ正確な全体像を描く。また改元定、院殿上定など儀式制度の内容にも具体的に触れ、当時の宮廷生活を垣間見させる。
[平安|鎌倉][政治家|文化人|官人]
森茂暁 著
佐々木導誉(高氏)は佐々木氏の庶流京極家の出で、近江に本拠を据え、初め北条高時に仕えたが、南北朝動乱期に活躍し、足利尊氏を補佐して幕府の基礎固めに尽力した。多くの国の守護を兼ね、旧来の権威を軽視する「ばさら大名」の典型とされた反面、芸能・文芸に堪能な風流の武将であった。文武両道に秀でた魅力的な風雲児の生涯を描く。
[鎌倉|南北朝][武将・将軍]
川添昭二 著
蒙古襲来の時代を生きた第8代鎌倉幕府執権。外圧を背景に、自らの権力確立のため、北条一門の名越氏と異母兄時輔を反得宗(とくそう)とみなして誅殺。34歳の若さで没した生涯を、今まであまり利用されなかった『建治(けんじ)三年記』や無学祖元(むがくそげん)の語録などを通して詳細に描写。蒙古問題の宗教的代弁者、日蓮にも説き及び、歴史の真相を浮き彫りにする。
[鎌倉][武将・将軍]
永井晋 著
鎌倉時代末期の政治家。霜月(しもつき)騒動に連座して不遇の幼少期をおくるが、得宗(とくそう)家の信頼を得て六波羅探題(ろくはらたんだい)・連署(れんしよ)となり、病弱な執権北条高時を支えた。15代執権に就任するが、政争の激化により辞任、幕府の滅亡に殉じた。膨大な貞顕(さだあき)書状から、高時政権を再評価し、称名寺造営や金沢文庫本の充実から、鎌倉の武家文化に足跡を残した権力者の実像に迫る。
[鎌倉][武将・将軍|文化人]
上杉和彦 著
鎌倉時代前期の政治家。もとは朝廷の実務官人であったが、源頼朝(よりとも)に招かれ草創期の幕府の中心的存在となる。政所別当(まんどころべつとう)として守護(しゆご)・地頭(じとう)制の整備に関わり、朝廷・幕府間の交渉で卓越した政治手腕をふるった。頼朝没後、将軍頼家(よりいえ)・実朝(さねとも)を支えつつ、北条氏とも協調を図り武家政権の確立に貢献した文人政治家の実像を、新史料を駆使して浮き彫りにする。
[鎌倉][官吏・官僚|政治家]
峰岸純夫 著
鎌倉幕府を滅ぼした武将。後醍醐(ごだいご)天皇の計画に呼応して倒幕を果たし、建武(けんむ)政府の一翼を担う。足利尊氏(あしかがたかうじ)との対立を深め、南北朝動乱の中で、転戦の末、越前国藤島で不慮の戦死を遂げる。信頼し得る古文書を博捜し、義貞(よしさだ)を支えた人的基盤を探るとともに、『太平記』によって創り出された凡将・愚将観を見直す。その実像を活写する義貞伝の決定版。
[鎌倉|南北朝][武将・将軍]
井上宗雄 著
鎌倉時代後期の歌人。藤原定家の流れを汲む和歌の一門に育ち、伝統的な歌風を刷新する「京極派(きようごくは)」を確立。宗家の二条派と争った末、勅撰集『玉葉(ぎよくよう)和歌集』を撰進(せんしん)するが、「和歌の師範」の立場を超えた政治への介入を疎(うと)まれ、二度の配流(はいる)に遭う。清新な美意識と印象鮮明な歌風に彩られた豊富な作品を織り交ぜながら、反骨を貫いた波瀾の生涯を描く実伝。
[鎌倉][文化人|官人]
森幸夫 著
鎌倉時代中期の政治家。六波羅探題として長期在京し兄泰時の執権政治を支え、朝廷からも絶大な信頼を得ていた。鎌倉帰還後は豊かな政治経験を活かし、連署として若き執権時頼を補佐し幕政を主導した。重時が遺した現存最古の武家家訓は、当時の生活や思想を垣間見ることができて貴重。鎌倉幕府政治の安定化に大きく寄与した重時の生涯を辿る伝記。
[鎌倉][武将・将軍]
田渕句美子 著
鎌倉時代の女流歌人。歌道の家である御子左(みこひだり)家に嫁ぎ、古典を講じ、歌論書を執筆するなど、当時の女性としては類を見ないほど和歌の世界で活躍し、家業を支えた。夫の為家(ためいえ)死後、遺産争いの訴訟で鎌倉に下向した時の様子を『十六夜(いざよい)日記』として残す。才気溢れる文学者であり、良妻賢母の手本とされたその人物像を、時代背景や女性観に即して描き出す。
[鎌倉][文化人|女性]
山田昭全 著
鎌倉前期の真言僧。流配地伊豆で源頼朝と親密な関係を築き、後白河院との連携を工作して平家打倒に奔走。動乱の仕掛人として荘園の寄進を受け、神護寺や東寺等の復興に努めた。過激な言動で三度の流刑となるが、その根源には鎮護国家の理想をめざす宗教的使命感があった。鎌倉期の仏教文化と政治に大きな足跡を残した荒法師の波乱の生涯を描く。
[平安|鎌倉][宗教者]
高橋慎一朗 著
鎌倉時代中期の政治家。父時氏・兄経時があいついで早世したため、20歳で執権に就任。宝治合戦で三浦氏を滅ぼし、得宗家(とくそうけ)を中心とする幕府体制を完成させる。蘭渓道隆(らんけいどうりゆう)を開山に招き建長寺を創建し、執権を辞任・出家後も、幕府の最高権力者であり続けた。政治家と仏教者のイメージが交錯するところに生まれた伝説の背景にも触れ、その生涯を描く。
[鎌倉][武将・将軍]