後藤昭雄 著
平安中期の文人官僚。学問の家に生まれ、大学寮に学んだ後、歌人・赤染衛門(あかぞめえもん)と結婚する。詩文の才に秀で、優れた漢詩文を制作、詩集『江吏部集(ごうりほうしゆう)』が伝わる。文章(もんじよう)博士、一条天皇の侍読(じどく)などを歴任して、藤原道長とも緊密な関係を築き、晩年は尾張(おわり)・丹波(たんば)の国守を務める。平安朝における正統な文学〝漢詩文〞の世界に、大きな足跡を残した生涯を描く。
[平安][学者|文化人|官人]
井上宗雄 著
鎌倉時代後期の歌人。藤原定家の流れを汲む和歌の一門に育ち、伝統的な歌風を刷新する「京極派(きようごくは)」を確立。宗家の二条派と争った末、勅撰集『玉葉(ぎよくよう)和歌集』を撰進(せんしん)するが、「和歌の師範」の立場を超えた政治への介入を疎(うと)まれ、二度の配流(はいる)に遭う。清新な美意識と印象鮮明な歌風に彩られた豊富な作品を織り交ぜながら、反骨を貫いた波瀾の生涯を描く実伝。
[鎌倉][文化人|官人]
山中裕 著
平安中期、摂関政治の全盛を築いた公卿。藤原氏内部の熾烈な争いの後、執政者となる。外戚(がいせき)の地位を確固とし、穏やかな政治手法は華やかな宮廷文化を育み、また幸運な環境にも恵まれ、人と争うことなく順調な生涯を送った。『御堂関白記』をはじめとする日記や『栄花物語』『大鏡』を比較し、道長ら公卿たちの内面に迫りながら、その傑出した実像を描く。
[平安][官人|政治家]
義江明子 著
奈良朝に政界で活躍した女官。少女の時より、天武から聖武までの歴代天皇に側近として仕える。特に元明女帝との強い絆と卓越した資質で比類ない政治力を培い、夫藤原不比等の政治基盤を固め、子の橘諸兄、光明子らの政治的地位を確立させた。女帝が即位し、貴族女性の政治的活躍が求められた時代、新興氏族の藤原・橘氏の繁栄の基盤を築いた生涯。
[飛鳥|奈良][官人|女性]
稲岡耕二 著
奈良時代の歌人。大宝の遣唐時、無位無姓にして遣唐少録(しようろく)に抜擢されるが、それ以前の経歴は分からない。帰国後、伯耆守(ほうきのかみ)、令侍東宮(れいじとうぐう)となるが、類稀な歌才を発揮するのは最晩年の筑前守任官後のことである。大宰帥(だざいのそち)大伴旅人(たびと)との短くも濃密な交流から生まれた『万葉集』の作品群を読み解き、人間の情や生老病死と向き合う独自の作風と貴き生涯を追う。
[飛鳥|奈良][官人|文化人]
山本信吉 著
平安中期の名筆。小野妹子らを輩出した中国通の名族に生まれ、若くして能書(のうしょ)の誉れ高く、醍醐・村上天皇の側近として活躍した。唐の書風から苦心して和様書法を創造し、三跡の代表として名高い。断片的にしか知り得ない経歴を政治・文化などの時代背景から探り、真筆とされる書法の特徴を明らかにして、文化史上に多大な影響を及ぼした生涯に迫る。
[平安][文化人|官人]