平野義太郎 著
明治期の自由民権運動の急先鋒、自由党最左翼の驍将大井憲太郎の全生涯を描く。板垣退助や土佐の立志社などの自由党中央派は著名であるが、自由党を乗り越えて進んだ平民的革命派の苦闘を知る人は少ない。本書は大井を中心として、普選運動と労働者農民運動に、生命を賭して闘った歴史の推進力の全貌を明らかにする。
[明治|大正][政治家]
宮田俊彦 著
学者であり政治家でもあった吉備真備は、奈良時代屈指の著名な人物でありながら、彼に関する直接史料はほとんどない。しかもその生涯には華々しい躍動はなかったけれども、穏健な人柄と、再度の入唐によって得られた該博な学識とは、権謀術数渦巻く平城政界にとって一服の清涼剤であった。厳正な史料分析によるすぐれた真備伝。
[奈良][政治家|学者|官人]
横田健一 著
怪僧か、傑僧か。女帝の寵を一身に集めて法王の位に上り、更に皇位をもうかがうに至った空前絶後の怪人物。当時の呪術の盛行と異常な崇仏の様を描いて、宮廷が魔術園と化していたことを明らかにするとともに、女帝治下の暗闘・陰謀を説いて道鏡登場の背景を解明し、秘術の深奥を衝く。古代史上の大きな謎をときほぐした快著。
[奈良][宗教者|政治家]
圭室諦成 著
佐久間象山と共に幕末期における開明的思想家として世界的視野に立ち、新日本の進路を明示した維新の英傑。出身の肥後藩の容れるところとならず、越前藩に迎えられて最高顧問となり、幕政の改革にも参加、さらに明治新政府に入っては参与となったが兇刃に倒れたその生涯。小楠に対する愛着切なる著者が情熱を傾注して綴った好伝記。
[江戸|明治][思想家|政治家]
河合正治 著
豊臣秀吉の天下統一を授けたものに僧侶安国寺恵瓊があることを知る人は少ない。東福寺の住持で一方伊予六万石の大名になった幅の広い人生を持ち、毛利氏の外交僧として敏腕を揮い、転換期を泳ぎながら、ついに関ヶ原の役に石田三成・小西行長らとともに西軍の主謀者として処刑される波瀾の一生を、確実な史料によりその全貌を描く。
[安土桃山][宗教者|政治家]
坂本太郎 著
学問の神「天神様」に対する信仰は、伊勢や八幡信仰などとともに脈々と日本人の心に波打っている。しかしながら、天神様が菅原道真であることや、道真その人については、どれだけ知られているであろうか。本書は、のちのいわゆる天神伝説を取除き、真実の道真像を丹念に叙述した史学界の碩学による道真伝の定本をなす名著である。
[平安][学者|政治家|官人]
横川末吉 著
土佐藩政確立期における名宰相野中兼山は、単にすぐれた政治家というだけでなく、儒学者であり、経世家でもあった。徹底した藩体制確立のために、反兼山派の抬頭をみ失脚の悲運に遭遇するが、近世末の土佐藩の活躍は彼に発端するといっても過言ではない。本書は経済史的な観点を踏まえ、未公開の史料を駆使して、土佐藩政史の中に兼山を浮彫りにした好著。
[江戸][政治家|学者]
宮崎道生 著
新井白石は詩人として名声は琉球・朝鮮・清朝にまで及び、学は和漢洋を兼ね、人文・社会・自然の諸科学にわたる碩学であった。「正徳の治」を企画して幕政のレヴェルを上げ、オランダには「将軍の師」と伝えられた。明治以後は第一級の日本人と評価され、学界では「近代科学の父」とされてもいる。白石研究の第一人者が心魂をこめて綴った伝記。
[江戸][学者|政治家|文化人]
山口修 著
前島は「郵便の父」として、ひろく知られているように、郵政事業の基礎を確立し、その発展に尽瘁した。しかし前島の業績は郵政にとどまらない。海運・鉄道・新聞などの近代事業、また教育や国字改良などに果した役割は、きわめて大きい。いかにして、このような人物が生まれたのか。本書は雪深い越後から江戸に出て、刻苦勉励、新政府に出仕して活躍した、その生涯をたどる。
[江戸|明治|大正][官吏・官僚|政治家]
犬塚孝明 著
新国家建設と近代外交の確立に全生涯を賭けた外務卿寺島宗則の本格的評伝。蘭学者から一転して、新政府の外交指導者となった寺島の思想と行動を新史料を駆使して丹念に跡付ける。欧米に対する自主外交、東アジアに対する条理外交という新たな視点から寺島外交を再評価。さらに伊藤博文との政治的競合・対立にも新解釈を加え、新しい寺島像を描く。
[江戸|明治][政治家|外交官]
橋本義彦 著
平安時代末期から鎌倉時代初期という激動の時代に生きた公家政治家。従来、良い評価は与えられてこなかったが、それは通親と鋭く対立した九条兼実の日記『玉葉』の記述に依拠したためである。本書は通親の生涯の足跡をたどり、できるだけ正確な全体像を描く。また改元定、院殿上定など儀式制度の内容にも具体的に触れ、当時の宮廷生活を垣間見させる。
[平安|鎌倉][政治家|文化人|官人]
高島正人 著
国の将来をになう政治家となるため、父鎌足によって幼少のころより英才教育を受けた稀代の大政治家。大宝・養老律令の編纂をはじめ、銭貨の鋳造、年号の使用、文字・学問の普及など、その高邁な識見と卓越した指導力によって律令政治の実施に尽力する。また皇室との姻戚関係を深め、藤原氏繁栄の礎を築く。不比等の政治と生涯を描く本格的伝記。
[飛鳥|奈良][政治家|官人]
川田貞夫 著
対外関係の緊迫した幕末、ロシアの国境画定要求を巧みに処理し、寸土を譲ることなく日露和親条約の締結を成し遂げた幕府吏僚の俊秀。軽輩の家から立身して勘定奉行に栄進し、海防事務に参与したが、安政の大獄に坐して隠居、江戸開城の決定を知りピストルで自尽するに至る。その才腕を示す業績の全般と幕臣としての信念に生きた生涯を克明に描く。
[江戸][武人・軍人|政治家]
寺崎保広 著
奈良時代の皇族政治家。政府の首班として権勢を振るうが、藤原氏の陰謀によって自尽に追込まれる。文化・知識人としても勝れ、和銅経・神亀経を残す。なぜ「長屋王の変」は起きたのか。邸宅跡の発掘に立会った著者が、出土した大量の木簡や資料を基に政変の真相を探り、王家の生活を復元。これまでの研究史と最新の研究成果を活かして生涯を描く。
[飛鳥|奈良][政治家|天皇・皇族]
元木泰雄 著
平安時代後期の摂政・関白。白河院による関白罷免と籠居を経験、復権後は次男頼長を支援して嫡男忠通と対立、摂関家を分裂させる。その一方で、院や院近臣の圧力に抗しながら衰勢の摂関家を支え、荘園や武力を集積して中世の摂関家の基礎を築いた敏腕の政治家でもあった。失脚と復権を経て保元の乱後の幽閉に至る波乱の生涯と、その人物像を描く。
[平安][官人|政治家]
田口親 著
明治のエコノミスト・政治家・起業家・歴史家。幕臣の家に生まれ維新後の逆境の中で新しい学問と出会い、近代日本建設のため自由貿易主義を掲げ独自の文明史論を展開する。『東京経済雑誌』の創刊、鉄道会社の経営、南洋開発、東京市府会議員・衆議院議員、税制・幣制改革、『国史大系』の編纂刊行等、前人未到の足跡を残した快男児50年の生涯。
[明治][学者|政治家]
栗田直樹 著
朝日新聞社主筆から転身し、戦後の55年体制の礎を築いた政党政治家。その前年、吉田茂に代わって自由党総裁となると、翌年に民主党の鳩山一郎との対立を超えて自由民主党を成立させた。自らの経験と人脈を生かす、「情報組織の主宰者」とも呼ぶべき政治手法によって首相の座を目前にしながら急逝。いま埋もれつつあるその足跡を明らかにする。
[大正|昭和][文化人|政治家]
上杉和彦 著
鎌倉時代前期の政治家。もとは朝廷の実務官人であったが、源頼朝(よりとも)に招かれ草創期の幕府の中心的存在となる。政所別当(まんどころべつとう)として守護(しゆご)・地頭(じとう)制の整備に関わり、朝廷・幕府間の交渉で卓越した政治手腕をふるった。頼朝没後、将軍頼家(よりいえ)・実朝(さねとも)を支えつつ、北条氏とも協調を図り武家政権の確立に貢献した文人政治家の実像を、新史料を駆使して浮き彫りにする。
[鎌倉][官吏・官僚|政治家]
宇野俊一 著
明治時代の軍人政治家。長州藩士を率い、戊辰(ぼしん)戦争で転戦。維新後、ドイツで軍事学を修め、陸軍の草創に貢献する。元老山県有朋(やまがたありとも)の後継者として三度にわたり内閣を組織し、桂園(けいえん)時代を築く。日露戦争や条約改正など対外問題を処理する一方、大逆(たいぎやく)事件の対応などに苦慮した。やがて閥族(ばつぞく)政治の限界を悟り、その脱却を試みつつも挫折した波瀾の生涯に迫る。
[明治|大正][武人・軍人|政治家]
大石学 著
「大岡越前」として名高い江戸中期の幕臣・大名。将軍吉宗の信頼の下、若くして江戸の町奉行に抜擢され、防火対策や物価政策など、首都江戸の機能を強化。また、地方(じかた)御用・寺社奉行を歴任し、幕府最高の司法・立法機関である評定所一座に加わり、各地の紛争を裁定する。全国各地の史料を博捜(はくそう)し、享保(きようほう)改革を支えたその実像に鋭く迫る、本格的伝記。
[江戸][大名|政治家]