マメ科(APG分類:マメ科)の一年草。北部アフリカから西アジア原産で、豆を食用、また茎葉を飼料とするため栽培される。茎は断面が四角形の中空で直立し、高さ0.4~1メートル。葉は羽状複葉、葉柄の基部に茎をなかば抱く托葉(たくよう)がある。春に、葉の付け根から短い花茎を出し、5弁の蝶形花(ちょうけいか)を2~6花つける。花弁は白ないし淡紫色で、旗弁の黒色斑紋(はんもん)が目だつ。果実は豆果で、莢(さや)は直立し、空に向かうので空豆の字もあてている。大粒種var. major Harz.と小粒種var. minor Beck.とがあり、大粒種はアルジェリアを中心とする北部アフリカ地域、小粒種は西アジア、カスピ海南部地域の原産である。大粒種の莢は長さ10センチメートル、幅3センチメートルになり、種子は長さ2センチメートルほどで平たい。小粒種の莢は長さ4~5センチメートル、幅は約1センチメートル、種子は丸く径は1センチメートルほどである。1莢内には2~4個の種子があり、成熟すると莢は黒色になり、しわが寄り、大粒種ではやや下垂する。完熟種子は乾豆として利用される。未熟な種子は野菜として利用され、莢の背部が黒化し始めたころに収穫され、若いうちは莢のまま、晩期にはむき実として出荷される。
普通は10月ころ播種(はしゅ)して翌年の4月から収穫するが、暖かい地方では9月に播種し、12月から収穫する早熟栽培がある。酸性土壌を嫌い連作に弱い。生産の多いのは中国、エチオピア、オーストラリアで、世界生産の5割を占めている。日本では鹿児島、千葉、愛媛、茨城が多く、そのうち、野菜用未熟豆用の栽培は愛媛、香川県をはじめ暖地の諸県で多い。
栽培の歴史は古く、古代ギリシア、エジプトで栽培された。日本へは聖武天皇(しょうむてんのう)の天平(てんぴょう)8年(736)に中国を経て伝えられた。日本での主要栽培品種はすべて大粒種で食用が主である。ヨーロッパでは完熟した種子を加工してスープなどに利用することもあるが、飼料としての栽培が盛んで、茎葉をトウモロコシやヒマワリなどとともにサイレージ(層積飼料)とする。アメリカでも近年、緑肥、飼料用の栽培が増えている。
2019年10月18日
ソラマメの熟した種子は煮豆(お多福豆やふき豆)、フライビーンズ、甘納豆、餡(あん)などのほか、みそやしょうゆの原料とする。栄養成分は乾豆100グラム中、タンパク質26グラムを含むほか、糖質50.2グラム、脂質2グラム、カルシウム、リン、鉄などの無機物も多く含み、カロチンも多い。未熟豆は野菜として利用され、塩ゆでは季節の味覚として酒のつまみなどに賞味される。甘煮にして料理の付け合せに、またポタージュなどにもよい。発育のごく初期の若い莢はそのまま煮食される。
2019年10月18日