日本大百科全書(ニッポニカ)

男性乳がん
だんせいにゅうがん

男性にみられる乳がん。男性の乳がんの罹患(りかん)率は女性乳がんの1%程度とまれではあるが、乳がんは男性にも発症する。女性より5~10歳程度高い年齢層に多くみられる。発症のリスク因子には男性乳がんの家族歴(直系の男性親族に乳がんになったことがある人がいる)、体内エストロゲンレベルの上昇をもたらす睾丸(こうがん)疾患(停留睾丸、睾丸炎の既往など)の存在、エストロゲンやテストステロンの服用、肥満、5α(アルファ)リダクターゼ抑制作用を有する男性型脱毛症治療薬や前立腺(せん)治療薬の服用、胸壁放射線照射の既往、運動不足などがあげられている。
 男性乳がん患者の15~20%は家族歴を有し、BRCA2遺伝子変異が5~15%に認められると報告されている。組織型では浸潤性乳管がんが大半であり、予後は女性乳がんと同等である。
 胸部にしこりを触れる場合、「女性化乳房」(乳腺の肥大)との鑑別が必要になることがある。女性化乳房は、相対的に男性ホルモンより女性ホルモンの分泌が優位になる思春期や老年期にみられる(女性ホルモンは男性でも分泌されている)が、ホルモン作用による生理的なもので、放置しても1年程度で消失することが多い。
 男性乳がんの治療の流れは女性乳がんと同様であるが、女性乳がんと異なりアロマターゼ阻害薬の有用性は確立されていない。
[渡邊清高]2019年10月18日