日本大百科全書(ニッポニカ)

EPA
いーぴーえー

Economic Partnership Agreementの略。二国間など複数の国や地域の間で、貿易・投資自由化、人的交流拡大、環境保護、テロ防止ルールづくりなどの経済関係の緊密化・円滑化を目的に結ぶ国際協定である。FTA(Free Trade Agreement)と概念は同じであり、EPAは日本の外務省がつくった和製英語である。なおEPAは「経済連携協定」、FTAは「自由貿易協定」と訳されている。
 世界の主要国は1990年代に、二国間や特定地域内だけでFTAを結ぶ動きを強めた。日本もシンガポールやメキシコなどとのFTA締結を急いだが、貿易全体に占めるFTA相手国との比率はアメリカ、EU、韓国、中国などを下回っていた。とくに米、麦などの農産物の関税引下げに農業団体が強く反発し、これが日本の協定締結を遅らせている。このため日本では「わが国のFTA締結テンポは世界の主要国より遅れている」との批判的報道が目だつようになった。批判を受け、外務省は2000年代初頭にEPAという新たな用語をつくり、「FTAが関税撤廃・削減やサービス貿易の障壁撤廃を目的とする協定であるのに対し、日本のEPAは投資、人の移動、知的財産保護などを含むより幅広い協定である」と説明するようになった。日本国内ではこうした外務省の説明に準じ、同様な用語説明をするケースが多い。ただ多くの国・地域が結んでいるFTAには、投資・知的財産保護ルールなども盛り込まれており、EPAとFTAに概念上の違いはない。また、国際交渉の場や外国報道機関はFTAという用語を使うのが常で、日本開催の国際会議などでEPAという用語を使う際にはほとんどFTAと併記される。
 日本は2019年(平成31)2月までにシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、東南アジア諸国連合(ASEAN)、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP(環太平洋経済連携協定)11か国、ヨーロッパ連合(EU)とEPA・FTAを結んだ。
[矢野 武]2019年10月18日