日本大百科全書(ニッポニカ)

乳房再建術
にゅうぼうさいけんじゅつ

乳がんの外科療法(手術)によって失われた乳房を形成外科の技術によって再建する手術法。自家組織を用いる方法と人工乳房(インプラント)を用いる方法があり、乳房切除術と同時に行う一次再建と切除術後期間をあけて行う二次再建に分けられる。手術を担当するのはおもに形成外科医である。
 自家組織による再建では、おもに腹部や背中の組織を移植し、乳房の形状を再現する。腹部の組織を移植する方法には腹直筋皮弁法(皮膚、脂肪、筋肉の一部に血管をつけた状態で胸部に移植する)と穿通枝(せんつうし)皮弁法(脂肪のみを血管をつけた状態で胸部に移植する)があり、背中の組織を移植する方法には広背筋皮弁法(皮膚、脂肪、筋肉の一部に血管をつけた状態で胸部に移植する)がある。
 人工乳房による再建では、皮膚を伸ばすエキスパンダーを胸部の筋肉下に挿入し、その内部に生理食塩水を注入して乳房の形に膨らませ、エキスパンダーを人工乳房に入れ替える。乳房切除術の際にできた手術創を利用して再建手術を行うため、新たな創はできない。人工乳房はシリコン製で安全性に優れ、その後のマンモグラフィ検査にも影響しない。また、乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはない。一方で、人工物を体内に留置することになるため、術後の治療や放射線療法への影響や、感染や組織の壊死(えし)などの合併症のリスクなどについても、十分な評価と準備が必要と考えられている。
 乳房再建術は、治療によって変化した外見を補い、術後の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)の維持や乳房を失うことで生じる心理的ショックを和らげることを目的に行われるもので、実施は患者の希望に基づくが、乳房切除を行うすべての女性において検討されるべきものである。
[渡邊清高]2019年10月18日