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遺伝性乳がんの発症を予防する目的で行われる乳房切除手術。リスク低減乳房切除ともいう。
遺伝性乳がんはBRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子の変異が要因とされ、変異陽性者では25歳ごろから徐々に発症リスクが高くなる。これらの遺伝子の変異がみつかった場合に、乳がん未発症変異陽性者では両側の乳房切除が、片側の乳房にすでに乳がんを発症している既発症変異陽性者では反対側の乳房に対して切除が検討されることがある。日本乳癌(がん)学会の「乳がん診療ガイドライン」(2018年版)では「いずれにおいても、乳癌発症リスクは明らかである」と述べられており、推奨グレードは前者については2(弱く推奨する)、後者については1(強く推奨する)に位置づけられている。
その時点では健康な乳房を切除することへの精神的・身体的負担、また切除後、乳房の再建は可能ではあるが感覚は回復しないことなど、乳がん発症のリスクと予防的切除のベネフィット(利点)を慎重に考慮したうえで適応を検討することが望まれる。実施の検討にあたっては、本人の意思に基づき遺伝カウンセリングを受けられる体制などの環境が整備されていることが重要である。なお、日本においては保険適用外の手術であるため、これに関連する一連の医療費(乳房再建術を含む)はすべて自費となる。
2013年にはアメリカの著名女優が予防的乳房切除を受けた自らの体験を手記にして話題になり、予防的乳房切除という選択肢が一般に知られるきっかけとなった。
2019年10月18日