図書館での図書の効率的利用を図るための分類法。古来図書館は、蔵書の系統だった組織化のためにそれぞれ独自な分類体系を考案していた。アレクサンドリアの図書館でカリマコスがつくった『ピナケス』(前2世紀)は当時のギリシア語文献を12部門に分けていたという。19世紀までの図書館の分類は各館のコレクションに当てはめた大区分を主とするものが多かった。学問分類と異なり、図書館の資料分類は書架上の本をまとめる目的が大きかったからである。
2021年1月21日
19世紀後半、公共図書館の出現とともに、すべての分野を網羅した簡便な共通分類法が求められるようになった。メルビル・デューイMelvil Dewey(1851―1931)の『十進(じっしん)分類法』Decimal Classification(DC。初版1876年)は、数字を使って全領域を9区分し(別に0を総記として百科事典・年鑑等にあてた)、さらに各区分の下も10区分していく方法をとった。この分類法は覚えやすく使いやすいため、アメリカの公共図書館の採用するところとなり、ヨーロッパをはじめ世界各国がこの方式にのっとり、自国の十進分類法を考えるようになった。同時に、出版物の基となる学問体系、知識の分類を理論的に組み立てようとの試みもあった。1940年から1953年にかけて出版されたヘンリー・ブリスHenry Bliss(1870―1955)の『書誌分類』Bibliographie Classificationはその一例である。
蔵書量10万冊を超す学術図書館では、数字ばかりを細かく区分していく方法はかならずしも使いやすくはなく、基本区分の多いほうがよいとの立場から、アメリカ議会図書館がアルファベット2文字と数字を組み合わせた大図書館用の『アメリカ議会図書館分類法』Library of Congress Classification(LCC。1920年代末に32分冊完成)を完成させると、大学図書館などは、これに移行するところが増えた。
20世紀に入ると、本を棚に配架するための分類(書架分類)とは別に、論文等の主題を理論的に分類する方法(書誌分類)を考案する必要が生じてきた。『国際十進分類法』Universal Decimal Classification(UDC。初版1905年、日本語版は簡略版1955年から)はデューイの十進分類法を基にし、複合主題を記号で組み合わせる方法で細部までの分類を可能にしている。インドの図書館学者ランガナタンS. R. Ranganathan(1892―1972)の『コロン分類法』Colon Classification(CC。初版1933年)は主題の構成単位要表(ファセットfacet)をつなぐ分析・合成の手法であった。科学技術資料を扱う情報センターでは『国際十進分類法』を使ったり、『コロン分類法』の方法を取り入れた各領域の「ファセット分類法」Facet Classificationを組み立てて使ったりしているところがある。
2021年1月21日
日本でも、明治期設立の図書館はそれぞれ独自の分類法をつくっていたが、デューイに基づいて、日本の歴史、地理、宗教、言語などを考慮した『日本十進分類法』Nippon Decimal Classification(NDC。初版1929年、新訂10版2014年)がしだいに定着し、現在では全国の公共図書館、大学図書館、学校図書館に採用されている。国立国会図書館では、和書の分類に『日本十進分類法』を使用した時期はあったが、1960年代から独自の『国立国会図書館分類表』National Diet Library Classification(NDLC。初版1963~1968年、改訂版1987年)の作成にとりかかった。
『日本十進分類法』は本表と補助表、相関索引からなっている。分類本表は、総記、哲学(宗教を含む)、歴史(地理を含む)、社会科学、自然科学、技術・工学、産業、芸術、言語、文学の10類をさらに十進法で区分する。数字3桁(けた)で項目まで分け、小数点の下3桁までの分類が示されている(例829.88=サンスクリット語〈82は中国語・東洋諸言語〉、338.156=手形、小切手〈330は経済〉)。
補助表は共通に使える細目区分の表で、形式区分(例‐05逐次刊行物)、地理区分(例‐11北海道地方)、海洋区分、言語区分(例‐69ポルトガル語)があって広く適用できる。相関索引はことばから分類記号をつきとめる索引であるが、あらゆる観点と関連性が列記してある(例、むぎ[植物学]479.343、むぎ[農業経済]611.34)。同一分類のなかの各図書の区別は一般に著者の頭字を片仮名またはローマ字で記号化した図書記号によって行っていく。
2021年1月21日