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小(こ)正月の予祝行事。また一種の芸能。秋の収穫時には、スズメ、サギ、カラスなどに作物を荒らされることが多いが、年初に害鳥を追い払う呪術(じゅじゅつ)的な行事をしておけば、その効果が秋にまで持続するという考えに基づく。子供たちが手に手に鳥追い棒と称する棒切れや杓子(しゃくし)を持って打ち鳴らし、「朝鳥ほいほい、夕鳥ほいほい、……物を食う鳥は、頭割って塩つけて、佐渡が島へ追うてやれ」などの歌を歌いながら、田畑などを囃(はや)して回る。大人も参加して家ごとにするもの、子供仲間が集まって家々を訪問して歩くもの、鳥追い小屋と称する小屋に籠(こも)るものなどがあり、信越地方から関東・東北にかけて広く分布する年中行事である。
近世には三味線の伴奏で門付(かどづけ)しながら踊る者が現れ、これも鳥追いという。正月元日から中旬まで、粋(いき)な編笠(あみがさ)に縞(しま)の着物、水色脚絆(きゃはん)に日和下駄(ひよりげた)の2人連れの女が、艶歌(えんか)を三味線の伴奏で門付をした。中旬以後は菅笠(すげがさ)にかえ、女太夫(おんなだゆう)と称したともいう。京都悲田院に住む与次郎の始めたものと言い伝えるが、京坂では早く絶え、江戸では明治初年まであった。
[井之口章次]