自己を外敵から守る仕組みであるはずの免疫が、本来は無害なはずの他者に対して反応することにより、体にとって不利益な症状が引き起こされる現象。この免疫反応は外部の抗原と、体内でつくられた抗体が結合することによりおこるが、アレルギーのきっかけとなる抗原のことを「アレルゲン」という。アレルゲンは体内に侵入する意図をもっていないので、体の表面(皮膚と粘膜)に付着している状態となる。どの場所でアレルギーがおきているか、何をアレルゲンとして反応がおきているかによって、アレルギー疾患はそれぞれ名前がついていて、それぞれに異なる症状がみられる。場所による疾患名としては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、口腔(こうくう)アレルギー症候群、消化管アレルギーがあり、アレルゲンによる疾患名としては、食物アレルギー、花粉症、ダニアレルギー、薬物アレルギー、金属アレルギーなどがある。
アレルギーがおこる原因は、アレルゲンの存在によるという考え方から始まり、皮膚・粘膜の慢性炎症があるために、過敏性がみられているという理解に進んでいる。アレルギーの治療は、症状を緩和させるための治療薬を用いる方法から始まり、症状がおこらないように普段から予防しておく方法が中心となってきている。また対処法は、アレルゲンをみつけて除去するという方法から始まり、最近ではアレルゲンに慣れて免疫反応がおこりにくくなることを目ざす、アレルゲン免疫療法が試みられてきている。
歴史的には、アレルギーという用語は1906年にピルケが最初に用いたといわれており、語源はギリシア語のallos(変じた)とergo(作用)に由来していて、本来生体の防御機構である免疫反応が「変じて」、生態に有害な反応として「作用」している病的状態ととらえられていた。1920年にはコーカArthur Fernandez Coca(1875―1959)が特定の物質に対する過敏症に対して、「不思議な」という語源からアトピーatopyと命名した。さらに1963年、ゲルPhilip George Houthem Gell(1914―2001)とクームスRobert Royston Amos Coombs(1921―2006)は、免疫反応の機序(メカニズム)に応じてアレルギーを4型(Ⅰ~Ⅳ型)に分類したが、現在の免疫学でその機序として明確に説明しうるものはⅠ型反応のみである。1966年には石坂公成(きみしげ)(1925―2018)、石坂照子(てるこ)(1926―2019)が免疫グロブリンE(IgE)抗体を発見した。Ⅰ型反応はIgE抗体が関与した「即時型アレルギー」といわれ、これがアレルギーの機序の中心的役割を担うとされている。