キク科(APG分類:キク科)の春播(ま)き一年草。アキザクラ(秋桜)、オオハルシャギク(大春車菊)ともいう。メキシコ原産。草丈は2メートルほどになり、葉は対生し、細く裂けた羽状葉をつける。花は茎頂につき、桃、赤、白色などがあり、径6~8センチメートルで、一重のほか中心部の管状花が発達した丁字(ちょうじ)咲きや八重咲きがある。元来は短日植物で秋に開花する花であるが、最近は改良が進み、日長に関係なく播種(はしゅ)後70日ほどで開花する早咲き品種がつくられ、センセーション、ラジアンス、ベルサイユなどが代表品種である。
日当りと排水のよい所ならどこでも簡単につくれる。播種は5月上・中旬、気温が安定したころ、播床を均一にならし、30センチメートル間隔に3~5粒播きとし、軽く覆土する。また8月下旬から9月上旬ころに播種すると短日により草丈が短く育つ。この場合、やや厚播きにするとよい。発芽幼苗期にネキリムシの被害が出やすいので注意を要する。
コスモス属ではこのほかにキバナコスモスC. sulphureus Cav.がよく栽培される。春播き一年草で、コスモスに比べ草丈は短く、葉幅は広く、色は黄、橙(だいだい)、赤などで、半八重咲きである。草丈50センチメートルほどの極矮性(ごくわいせい)種もある。近年とくに日本で品種改良が進み、秋にこぼれ種で発芽、開花する年2回咲きの品種もつくられている。
コスモス属は、アメリカのアリゾナから南米ボリビアに至る広い地域に約30種が分布するが、花卉(かき)としてのコスモスはメキシコに起源する。1789年、スペインから派遣された植物調査隊のビセンテ・セルバンテスは、マドリードのホセ・カバニエス神父に未知のキク科の種子を送った。神父はそれを栽培し、コスモスの名を与えた。日本には幕末に渡来したが、本格的に広がったのは1909年(明治42)、文部省が全国の小学校に栽培法を付して配布してからである。