政府による経済活動への介入を可能なかぎり減らし、市場原理による自由な競争を促すことで経済成長を図る思想・政策。具体的には公務員、政府組織、政府予算の規模を縮小し、規制を緩和して民間企業にできることは民間企業へ移管する。税などの国民負担は少なくてすむが、公的サービスの水準も低くなる(低福祉低負担)。オーストリアの経済学者フリードリヒ・ハイエクやアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンらの新自由主義を理論的基盤とする。公共投資で景気を刺激するケインズ主義的な経済政策と異なり、1980年代、当時のイギリス首相マーガレット・サッチャーが掲げたサッチャリズムやアメリカ大統領ロナルド・レーガンのレーガノミクスが、減税、民営化、規制緩和、金融引締めなどを柱とする小さな政府政策を推進して景気回復に成功し、世界的に注目されるようになった。究極的な姿としては「夜警国家」(政府が外交、警察・軍隊のみに集中する国)がある。「高福祉」を維持するためには、国民は「高負担」を受け入れなければならないことが多いが、スウェーデン、デンマークなど北欧諸国は、高福祉高負担の「大きな政府」を揺るがない政策として取り入れている。
日本では、1980年代後半の中曽根康弘(なかそねやすひろ)政権における国鉄、電電公社、日本専売公社などの民営化(中曽根民活)や、2000年代前半の小泉純一郎政権での郵政民営化など、「官から民へ」政策が小さな政府を指向していた。安倍晋三(あべしんぞう)政権のアベノミクスや菅義偉(すがよしひで)政権は、規制緩和や自己責任を重視する点は小さな政府を指向していたが、積極財政や金融緩和などは大きな政府的側面が強い。岸田文雄政権の「新しい資本主義」は新自由主義をとらず、成長と分配の好循環を生み出すとしており、大きな政府の色彩が強いとみられる。