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ドイツ映画。監督ロベルト・ウィーネRobert Wiene(1873―1938)。1920年作品。20世紀初頭ドイツでおこった表現主義を積極的に摂取した表現主義映画の代表作。曲線や斜線が異様に支配する構図、ゆがめられた遠近法、幻想的な照明効果、誇張された演技などの反リアリズム的要素から成り立ち、不安と混沌(こんとん)の内的イメージを強烈に主観描写した映画史上画期的な作品である。
原作者カール・マイヤーCarl Mayer(1894―1944)とハンス・ヤノウィッツHans Janowitz(1890―1954)は、眠り男ツェザーレを操って殺人事件を引き起こしていく主人公カリガリ博士の狂暴性を描き、戦争遂行者である国家を告発しようとした。しかし、映画化の段階で、すべては精神科病院患者の妄想であったというように改められた。ウェルナー・クラウスがカリガリ博士、コンラート・ファイトConrad Veidt(1893―1943)が眠り男を演じている。1921年(大正10)日本公開。当時の徳川夢声の名解説が語りぐさになっている。