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随筆家、小説家。父は明治の文豪幸田露伴(ろはん)。東京向島(むこうじま)に生まれる。母および姉弟を早くに失い、幼いときから父露伴に家事や身辺のことで厳しくしつけられる。24歳で酒問屋へ嫁ぎ、店の再興に力を尽くすが、10年を経て離婚。以後、露伴没するまで、その身辺で世話をする。1947年(昭和22)『芸林間歩』露伴特集号に『雑記』を載せ、注目される。同年7月露伴死去に伴い、『終焉(しゅうえん)』『葬送の記』(ともに1947)を書いて文壇に登場。『流れる』(1955)で新潮社文学賞・芸術院賞を、『黒い裾(すそ)』(1955)で読売文学賞をそれぞれ受賞。前者は自らの体験を基にしたもので、教養ある中年の女中梨花(りか)の眼(め)を通して、傾いていく芸者置屋の半年の流れを描いた秀作である。ほかに『おとうと』(1956~57)、『闘(とう)』(1965。女流文学賞受賞)などがあり、また露伴に関する書も多い。