大規模災害発生時に避難、救援・救助活動および物資の輸送を円滑かつ確実に行うため、道路管理者(国や地方自治体)が事前に指定する道路。高速自動車国道や広幅員の一般国道およびこれらを連絡する幹線道路、さらに都道府県知事が指定する大規模救出救助活動拠点などの防災拠点を連結する道路からなる。通行機能を最優先で確保すべき、都道府県庁所在地、地方中心都市および重要港湾、空港などを連絡する高規格幹線道路などからなる第1次緊急輸送道路と、第1次緊急輸送道路と市町村役場、主要な防災拠点(行政機関、公共機関、主要駅、港湾、ヘリポート、災害医療拠点、自衛隊など)を連絡する第2次緊急輸送道路、その他の第3次緊急輸送道路によって階層的ネットワークを構成している。緊急車両や物資輸送車両を迅速に被災地へ到達させるために、災害発生直後から一定期間は、一般車両の通行が制限されることもある。
兵庫県南部地震(1995年1月17日)では、倒壊した建物により主要幹線道路が複数箇所で閉塞(へいそく)し、発災直後の救援・救助活動の妨げとなっただけでなく、その後の復旧・復興プロセスにおいても大きな障害となった。この教訓から、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震改修が推進されており、また、倒壊する危険性の高い建物の除却が進められている。さらに、電柱の地中埋設(無電柱化)やマンホールの浮上抑制対策なども推進されている。
2011年(平成23)に制定・施行された「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」では、緊急輸送道路のなかでも重要性がとくに高いと認められる道路を「特定緊急輸送道路」に、また、この道路を閉塞させてしまう危険性の高い建物を「特定沿道建築物」に指定することで、耐震化状況(変更)報告・耐震診断実施の義務と耐震改修などの実施の努力義務を課している。また、耐震化に要する費用助成を行うことで耐震改修の促進が図られている。
緊急輸送道路の整備については都市計画や地域防災計画とも連動しており、災害時の通行確保だけでなく、平常時の都市の防災力強化にも寄与するなど、その整備と維持は国民の生命と安全を守るうえできわめて重要な社会基盤の一つである。