硬骨魚綱ヒメ目チョウチンハダカ科に属する海水魚。遠州灘(えんしゅうなだ)、土佐湾、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、東シナ海、台湾南部近海、南シナ海など西太平洋、インド洋などに分布する。体は細長く側扁(そくへん)し、頭部は縦扁する。吻(ふん)は長くて突出し、頭長は吻長の3.0~3.5倍。目は著しく小さく、頭長は眼径の9~11倍。口はほとんど水平に開き、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下をはるかに越えて、後方に伸びる。下顎の先端は上顎より前に出る。上下両顎の歯は顆粒(かりゅう)状または小円錐(えんすい)状で狭い歯帯を形成する。口蓋骨(こうがいこつ)の前端に小さい円形の歯帯があるが、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には歯がない。鱗(うろこ)は薄くて大きい円鱗(えんりん)。側線は鰓孔(さいこう)上端から始まり、始部でやや下降した後、ほとんどまっすぐに体の中軸を尾びれ基底(付け根の部分)部まで走る。側線鱗数は48~54枚。背びれは12~14軟条で、体のほとんど中央付近から始まる。臀(しり)びれは10~12軟条で、背びれ基底後部下方から始まる。小さい脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)が臀びれの基底後端と尾びれ基底の中間付近の上方にある。胸びれは第1軟条が肥厚し、途中で二叉(にさ)して糸状に長く伸長し、倒すと尾びれ基底近くに達する。第2~第8軟条は短く、その下方の5軟条は遊離して長く、後端は尾柄(びへい)の中央部に達する。腹びれの外側の第1軟条は長く伸長し、倒すと尾びれの基底に達する。尾びれの下葉の下2軟条は長く伸びる。頭は黒色、体は黒褐色で、背びれの直前と尾柄の中央部に幅広い白色横帯がある。尾びれは白色で、そのほかのひれは黒色。最大体長は27センチメートルほどになる。同じ個体が同時に精巣と卵巣を成熟させる同時的雌雄同体魚として知られている。水深610~1500メートルにすみ、伸長した左右の腹びれと尾びれを三脚のように海底に立てている姿が撮影されていることから、一般にサンキャクウオ(三脚魚)とよばれる。
胸びれが著しく伸長することや脂びれがあることなどで同じイトヒキイワシ属のイトヒキイワシに似るが、本種は臀びれの起部が背びれ基底の後端よりも前方にあること、尾びれの下葉基底の直前に鉤(かぎ)状の突起がないこと、腹びれの第1軟条を倒すと尾びれの基底に達することなどで、イトヒキイワシと区別できる。